ホルモンバランスの乱れに処方される薬って?ジュリナの効果と副作用まとめ

ホルモンバランスの乱れに処方される薬って?
ジュリナの効果と副作用まとめ

更年期障害に『ジュリナ』を飲んでいます。

ジュリナ錠は、経口のエストロゲン製剤です。当院ではすでに更年期障害の診断を受けていて

内服により更年期障害に伴う症状(ホットフラッシュ[のぼせ]・発汗・腟の乾燥など)

が落ち着いている方のみオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

ジュリナ錠(エストラジオール錠0.5mg)とは

ジュリナ錠は、女性ホルモン「17β‑エストラジオール」を有効成分とする経口のエストロゲン製剤です。
以下の目的で使用されます。

  • 更年期障害に伴う症状(ホットフラッシュ[のぼせ]・発汗・腟の乾燥など)
  • 閉経後骨粗鬆症の治療
  • 生殖補助医療(ART)領域
    └ ① 調節卵巣刺激の開始時期の調整
    └ ② 凍結融解胚移植(FET)におけるホルモン補充周期
    (上記ART関連は、2022年に効能追加承認)

ジュリナ錠の特徴

  • 有効成分は、生理活性の高い天然型エストロゲン(17β‑エストラジオール)
  • エストロゲンの低下による症状悪化や骨量減少を補正する作用

さらに、ARTのスケジュール調整や凍結胚移植(FET)でのホルモン補充療法(HRT)にも対応可能です。

注意すべきリスク

  • 重大な副作用:静脈血栓塞栓症(VTE)/血栓性静脈炎(頻度不明)
    → 足の腫れ・痛み、息切れ、胸痛、視力異常、麻痺などが出たらすぐに受診
  • 子宮がある方:黄体ホルモン(プロゲスチン)との併用が原則
    → 子宮内膜癌のリスクを抑えるため

効能・効果

更年期障害・卵巣欠落症状に伴う症状

  • ホットフラッシュ、発汗
  • 腟萎縮症状

閉経後骨粗鬆症

  • 骨密度維持・骨折予防

生殖補助医療(ART)

  1. 調節卵巣刺激の開始時期の調整
  2. 凍結融解胚移植(FET)におけるホルモン補充周期

⚠ 報告によると、自然周期や開始時期を調整しない場合と比べ、妊娠率・生産率が低下する可能性が示されています。
→ 適応の要否は個別に判断されます。


有効性(臨床試験より)

更年期症状に対する効果(国内二重盲検試験)

8週間の投与により以下の改善がみられました:

Hot flushの減少率
0.5mg群79.6%
1.0mg群82.5%
プラセボ群57.9%

閉経後骨粗鬆症に対する効果(104週試験)

投与週腰椎骨密度の増加(%)
28週+6.16%
52週+7.95%
104週+10.15%

※ 子宮の有無により、黄体ホルモンの併用有無を分けて評価


用法・用量

更年期障害・卵巣欠落症状

  • 通常:0.5mgを1日1回
  • 効果不十分時:最大1.0mgまで増量可
    ※ 子宮がある場合は原則としてプロゲスチン併用

閉経後骨粗鬆症

  • 1.0mgを1日1回
    → 開始6か月〜1年後に骨密度を評価し、効果がなければ再考

ART:調節卵巣刺激の開始時期の調整

  • 0.5〜1.0mgを21〜28日間内服
    → 後半に黄体ホルモンを併用

ART:凍結融解胚移植(FET)

  • 0.5〜4.5mg/日を内服し、子宮内膜が肥厚後に黄体ホルモンを併用
    → 妊娠8週まで継続(※1回量は2.0mgを超えないこと)

他のHRTからの切り替え

  • 周期的投与法:治療周期の最終日以降に切り替え
  • 逐次的投与法:休薬後に切り替え

使用できない方(禁忌)

  • 乳癌・子宮内膜癌などエストロゲン依存性腫瘍のある/疑いのある方
  • 未治療の子宮内膜増殖症/乳癌の既往
  • 血栓性疾患の既往(静脈炎、肺塞栓、心筋梗塞、脳卒中など)
  • 重度の肝障害
  • 異常性器出血(原因不明)
  • 妊娠中または妊娠の可能性がある方
  • 授乳中の方
  • 本剤の成分にアレルギーがある方

飲み合わせに注意が必要な薬(相互作用)

ジュリナは主にCYP3A4という肝酵素で代謝されます。

血中濃度↑(作用が強くなりすぎるおそれ)

  • マクロライド系抗菌薬(例:エリスロマイシン)
  • アゾール系抗真菌薬(例:イトラコナゾール、ケトコナゾール)

血中濃度↓(効果が弱くなるおそれ)

  • リファンピシン、フェノバルビタール、カルバマゼピン
  • エファビレンツ、ネビラピン
  • セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)含有製品

血中濃度が変動する可能性がある薬

  • リトナビル(HIV治療薬など)

⚠ サプリ・市販薬の併用も含め、すべて主治医に確認を


主な副作用と頻度

重篤な副作用(頻度不明)

  • 静脈血栓塞栓症/血栓性静脈炎

足の片方のむくみ・痛み、突然の息切れ、胸の痛み、視覚異常、めまい、片麻痺
すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。


よくある副作用

頻度主な症状
5%以上性器分泌物、乳房不快感
1〜5%未満性器出血、乳房痛・乳頭痛、腹部膨満、悪心、むくみ、背部痛、肩・手のこわばり、めまい、血中脂質上昇
1%未満便秘、下痢、胃炎、頭痛、不眠、感覚の鈍さ、動悸、血圧上昇、TSH増加、湿疹
頻度不明月経困難症、外陰部そう痒、腟カンジダ、倦怠感

長期使用に関する重要な注意点

※主に海外大規模試験(WHI、MWSなど)より

  • 子宮内膜癌:エストロゲン単独の長期使用でリスク上昇(1〜5年で約2.8倍、10年以上で約9.5倍)
     → 黄体ホルモンの併用でリスク軽減(0.8倍)
  • 乳癌:併用でリスク上昇(HR 1.24)。単独投与では明確なリスク上昇なし
  • 心疾患・脳卒中・認知症・胆のう疾患:一定のリスク上昇報告あり

必要最小限の期間・用量で使用し、定期的な婦人科・乳腺検診が推奨


まとめ

ジュリナ錠は、エストロゲン不足による諸症状や骨粗鬆症、ARTにおけるホルモン補充療法に効果を持つ内服薬です。

ただし、血栓症や腫瘍・血管イベントのリスクを伴うため、

  • 子宮がある場合は黄体ホルモンの併用が基本
  • 定期的な検診と医師の管理のもとで使用することが大切です。
  • エストラジオール錠0.5mg「F」は、ジュリナ錠の後発品であり、更年期・骨粗鬆症・不妊治療に有効なエストロゲン製剤。
  • 経口剤のため扱いやすく、一定の血中濃度を維持しやすい点が特長。
  • 妊娠中・授乳中には禁忌であり、使用前に医師との十分な相談が必要。
  • 信頼できる添付文書や論文に基づいて、副作用やリスク管理も十分に行う必要があります。
  • 治療歴・既往歴・現在の服薬状況に応じて、最適な投与方法は異なります。
    不安な症状や副作用、妊娠の可能性がある場合には、必ず医師に相談してください。

参考文献・出典

添付文書・インタビューフォーム

  • 医療用医薬品添付文書(PMDA)
  • インタビューフォーム(富士製薬工業、バイエル薬品)

📚 医学論文・エビデンス

  • WHI試験(Women's Health Initiative)
    → HRTの乳癌・心疾患リスクに関する報告
  • MWS(Million Women Study)
    → HRTの乳癌リスクに関する大規模調査
  • JAMA、NEJMなどの主要医学誌でのHRTに関する臨床研究

💻 オンライン情報源

【PubMed】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

【PMDA】https://www.pmda.go.jp

【KEGG DRUG】https://www.kegg.jp

よくある質問(Q&A)


ジュリナやエストラジオール錠0.5mg「F」は同じ系統の薬と比べて強みは?

エストラジオール錠0.5mg「F」は、先発品ジュリナ錠と同一の有効成分(17β‑エストラジオール)を含む後発品です。
同じ系統の既製薬(例:ディビゲル、ル・エストロジェル)と比較すると、

  • 経口薬のため使用が簡便
  • 投与量の調整がしやすい
  • 皮膚刺激などの局所副作用が少ない

といったメリットがあります。
また、ディビゲル(皮膚塗布剤)やル・エストロジェル(ゲル剤)は経皮吸収型で皮膚バリアの状態に影響されるため、一定の血中濃度を維持しやすい経口剤は、特にART用途などで選択されやすいという特長があります。

先発品ジュリナはいつ発売された薬ですか?

ジュリナ錠(先発品、バイエル薬品)は2008年に日本国内で承認・発売されました。
その後、後発品であるエストラジオール錠0.5mg「F」は、2022年2月に富士製薬工業より承認取得されました。

1か月(30日)処方された場合の薬価と実際の負担額の目安は?

エストラジオール錠0.5mg「F」の薬価は20.8円/錠(2025年現在)。

  • 30日分(1日1錠)の薬価:624円
  • 3割負担の方の自己負担額:約190円
  • 1割負担の方の場合:約63円

※処方料・調剤料などは別途加算されます。最新の価格は処方時にご確認ください。

作用はどれくらいで出ますか?持続時間は?

臨床試験において、投与2時間以内に血中濃度が上昇し、
6〜8時間後に最高血中濃度に到達することが確認されています。

  • 単回投与後の効果持続は約24時間
  • 1日1回投与で血中濃度は安定しやすく、定常状態は17日目前後で到達

更年期症状や骨粗鬆症、ARTなどの適応においては、継続服用により2〜4週程度で効果実感が得られることが多いです。

妊娠中にジュリナを使っても大丈夫ですか?

基本的に妊娠中の使用は禁忌です。
妊娠中に卵胞ホルモン(エストロゲン)を使用すると、胎児の性器分化などに影響を与える可能性があるとされており、特に以下のリスクが報告されています。

  • 子宮内膜・腟の腫瘍性変化(動物実験)
  • 男児胎児における女性化の可能性

例外として、生殖補助医療(胚移植)における一時的な使用があるものの、妊娠判明後は速やかに中止する必要があります。

授乳中でもジュリナを使用できますか?

授乳中の使用は推奨されません(禁忌)
ヒトでの報告において、エストラジオールは母乳中に移行することが確認されており、

  • 乳汁中ホルモン濃度が上昇
  • 乳児への影響が否定できない

といった懸念があります。
授乳を継続する場合は、他の治療選択肢(非ホルモン薬等)を検討する必要があります。

子ども(未成年)に処方されることはありますか?

基本的に小児への使用は想定されていません。

特に本剤は、閉経後や卵巣欠落後の女性向けのホルモン補充療法に用いられる薬剤であり、小児・思春期への適応はありません。

ただし、例外的に女性ホルモンの欠如に伴う治療(例:ターナー症候群など)で使用されるケースもありますが、慎重な専門医の判断が必要です。