生理痛やのぼせに使われる漢方「桂枝茯苓丸」とは?副作用や飲み方まで解説

生理痛やのぼせに使われる漢方「桂枝茯苓丸」とは?
副作用や飲み方まで解説

月経困難に『桂枝茯苓丸』を使っています。

枝茯苓丸は「瘀血(おけつ)※血流の滞り」を整える代表的な漢方薬であり、

  • 婦人科疾患〜外科的な症状(打撲・痔など)まで広く適応
  • 子宮内膜症や月経困難症などに対し、現代医学との併用症例が多いです

桂枝茯苓丸はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)|効能・副作用・飲み合わせ・用法用量をやさしく解説

想定読者:月経痛・月経不順、更年期ののぼせや肩こり、下腹部の張り感などでお困りの方。
漢方に興味はあるけれど、まず基本を知りたい方へ。

本記事は医療機関で処方される漢方薬(医療用漢方エキス製剤)について、患者さん向けにわかりやすく整理しています。


桂枝茯苓丸とは?

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、以下の5つの生薬で構成される漢方薬です:

  • ケイヒ(桂皮)
  • シャクヤク(芍薬)
  • トウニン(桃仁)
  • ブクリョウ(茯苓)
  • ボタンピ(牡丹皮)

古典医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』に由来する処方で、医療用のエキス顆粒・細粒・錠剤として製剤化されています。

体格がしっかりしていて赤ら顔の方、下腹部に張りや硬さ(抵抗)のあるタイプに合うとされ、婦人科の不調や更年期症状などに広く用いられます。

※医師が体質(証)を見極めたうえで処方されます。


特徴

● 証(しょう)に基づく処方

  • 同じ症状でも「証(体質・状態)」が異なると効き目が変わるのが漢方
  • 桂枝茯苓丸は、瘀血(おけつ)傾向(血の巡りが滞る体質)に用いられます

● 複数メーカーから供給

ツムラ・クラシエ・小太郎・本草・JPSなど。剤形は顆粒・細粒のほか、錠剤もあり。


効能・効果

次のような症状に用いられます:

  • 子宮およびその付属器の炎症
  • 子宮内膜炎
  • 月経不順・月経困難(生理痛)
  • 帯下(おりもの異常)
  • 更年期障害(頭痛・めまい・のぼせ・肩こり)
  • 冷え症
  • 腹膜炎・打撲症・痔疾患・睾丸炎

■ 適応されやすい体質(証)

  • 体格がしっかりしている
  • 顔が赤らみがち
  • 下腹部に張り・痛み(抵抗)がある

有効性(前臨床データより)

添付文書に掲載の薬効薬理試験(主に動物実験)では、以下のような作用が示されています:

● 更年期症状に関する作用

  • CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の反応抑制
  • 卵巣摘出ラットで皮膚温の上昇や血管拡張を抑制(更年期の「ほてり」に関与)

● ホルモン系への作用

  • 雌ラットでLH・FSH・エストラジオールの低下
  • 子宮重量や酵素活性の減少

● 子宮組織への作用

  • 子宮内の酵素活性を抑える
  • 子宮腺筋症の発症を抑制する可能性

※いずれも動物データであり、実際の効果は体質と症状をふまえた医師の診察に基づいて評価されます。


用法・用量

  • 通常、成人1日7.5g(エキス顆粒・細粒)を2〜3回に分けて、食前または食間に服用
  • 年齢・体重・症状により調整される場合があります
  • 錠剤も同様に、医師の指示に従って服用

使用できない方・慎重な使用が必要な方

状況注意内容
妊婦・妊娠の可能性がある方トウニン・ボタンピにより流早産の危険性。原則、避けることが望ましい
著しく体力が低下している方副作用が出やすく、悪化する可能性あり
高齢者生理機能が低下しているため、減量など慎重な投与が必要
授乳中の方母乳とのバランスをみて、医師と相談のうえで判断
小児臨床試験が行われておらず、原則医師判断で慎重に投与

飲み合わせに注意が必要なもの

● 他の漢方薬との併用

  • 同じ生薬を含む処方との重複に注意
     例:トウニン・ボタンピ・シャクヤクなど

● 西洋薬・サプリ

  • 特記された相互作用はありませんが、服用中の薬やサプリは必ず申告してください

副作用と発生頻度

■ 重大な副作用(頻度不明)

  • 肝機能障害・黄疸
     AST・ALT・ALP・γ-GTPなどの著しい上昇を伴う場合あり

■ その他の副作用(頻度不明)

  • 過敏症:発疹、赤み、かゆみなど
  • 消化器症状:食欲不振、胃部の不快感、吐き気、下痢など

服用後、以下の症状が出たら、服用を中止し速やかに医療機関を受診してください:
発疹・かゆみ、強いだるさ、尿の色の変化、白目が黄色い、続く腹痛・下痢など


まとめ

  • 桂枝茯苓丸は、婦人科の不調や更年期症状に広く使われる医療用漢方薬
  • 瘀血(おけつ)傾向(血の巡りが悪い体質)に合う処方です
  • 1日7.5gを2〜3回に分けて服用が一般的。効果が乏しい場合は継続せず、再評価が必要です
  • 妊娠中は原則使用不可など、ライフステージや体調に応じた注意が必要です
  • 副作用には重大なもの(肝機能障害)も報告されており、異常時はすぐに受診を

参考文献・出典

ツムラ医療用漢方製剤 添付文書(桂枝茯苓丸エキス顆粒)
https://www.tsumura.co.jp/products/ippan/pdf/038.pdf

KEGG DRUG:D06949(桂枝茯苓丸)
https://www.genome.jp/entry/drug:D06949

日本東洋医学会「漢方医学教育に関するコアカリキュラム」

✅ 論文例:
Noguchi, M. et al., J. Endocrinol., 176, 359–366 (2003).
Sakamoto, S. et al., J. Ethnopharmacol., 23, 151–158 (1988).
Mori, T. et al., Planta Med., 59 (4), 308–311 (1993).

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

桂枝茯苓丸は「瘀血(おけつ)※血流の滞り」を整える代表的な漢方薬であり、次の点が強みとされています。

  • 婦人科疾患〜外科的な症状(打撲・痔など)まで広く適応
  • 子宮内膜症や月経困難症などに対し、現代医学との併用症例が多い

他の瘀血改善系漢方(例:桃核承気湯、加味逍遙散など)と比べても、体力中等度以上で下腹部の張りが特徴的なタイプに選ばれやすいのが特徴です。

先発薬の発売年はいつ?

「ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)」は、1985年(昭和60年)5月31日付で承認されました。
古典漢方に基づく処方として、医療用エキス製剤として厚生省薬務局通知により製造承認されています。

1か月(30日)処方時の薬価と実際の目安価格(自己負担額)は?

▼ 例:ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)

  • 薬価:14.1円/g
  • 1日量7.5g × 30日 = 225g →
    14.1円 × 225g = 3,172円/月

▼ 自己負担額の目安(薬剤費のみ)

負担割合自己負担額(薬剤部分)
3割負担約950円
1割負担約320円

※処方料・調剤料・管理指導料などは別途必要です。

妊娠中は飲んでも大丈夫?

原則、妊娠中の使用は避けることが望ましいとされています。

  • 桂枝茯苓丸に含まれるトウニン・ボタンピは、子宮収縮を促す作用があるため、
    流産や早産のリスクが指摘されています。
  • 妊娠可能性のある方にも慎重な判断が必要です。

➡ 医師に妊娠中であることを必ず伝え、他の選択肢を検討してください。

授乳中は服用できる?

授乳中の使用について、母乳中への移行性や安全性に関する明確なデータはありません

添付文書上も、「治療上の有益性と授乳の有益性を比較し、授乳の継続または中止を検討する」との記載です。

➡ 医師に相談し、服薬中の観察をしっかり行うことが大切です。

子どもにも使える薬ですか?

桂枝茯苓丸は小児への臨床試験は実施されておらず、添付文書でも「慎重に投与すること」と記載があります。

子どもは体質変化が大きく、証(体質)判断も難しいため原則慎重投与です。

医師の明確な判断がある場合にのみ使用し、自己判断は避けましょう。

作用が出るまでどれくらいかかりますか?持続時間は?

漢方薬は即効性よりも体質改善に時間がかかるタイプの薬です。

桂枝茯苓丸も服用後数日〜数週間で変化を感じる方が多いですが、個人差があります。

明確な「持続時間」のデータはありませんが、1日2〜3回に分けて継続服用することで効果を安定させます

➡ 効果が感じられない場合でも、医師の判断で継続か中止かを見極めることが大切です。