「お腹の冷えで痛む」「胃が動かない」そんな不調に効く漢方・大建中湯とは

「お腹の冷えで痛む」「胃が動かない」
そんな不調に効く漢方・大建中湯とは

ゆるい便や便秘を繰り返すので『大建中湯』を使っています。

お腹が冷えて痛みがあり、張って苦しいといった時、大建中湯を使います。

大建中湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

大建中湯とは

**大建中湯(だいけんちゅうとう)**は、漢方の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された処方に基づく、漢方エキス製剤です。
構成は、以下の4つの生薬(しょうやく)です:

  • 乾姜(カンキョウ):加熱したショウガ
  • 人参(ニンジン):体力や消化機能を補う
  • 山椒(サンショウ):お腹を温め、動きを整える
  • 膠飴(コウイ):水あめのような生薬で、粘膜を保護

現代では、お腹の冷えや痛み、消化機能の低下があるときによく使われています。
医療用としては、ツムラ製小太郎漢方製薬(コタロー)製が流通しています。


大建中湯の特徴

● ツムラの独自技術「乾式造粒法」

  • 水だけで薬効成分を抽出し、噴霧乾燥して顆粒に加工
  • 有機溶媒(アルコールなど)を使っていないため、添加物が少なく安全性が高いとされています

● 人や動物で確認された薬理作用

大建中湯は、以下のような作用が確認されています:

  • 胃腸の動きをよくする(消化管運動促進)
  • 腸の血流を増やす
  • 消化を助けるホルモン(モチリンなど)の分泌を促す
  • お腹の動きが強すぎるときには抑える作用もある(動物実験)

● 医療用としての信頼性

  • 1985年に医療用として承認され、保険診療で使えるようになりました
  • 現在は全国の病院・クリニックで広く使用されています

効能・効果

適応となるのは、「お腹が冷えて痛みがあり、張って苦しいといった症状」がある方です。

具体的には以下のような状態に使われます:

  • 胃下垂・胃アトニー:胃の動きが弱く、消化がうまくいかない
  • ゆるい便や便秘を繰り返すタイプの下痢・便秘
  • 慢性的な腹痛をともなう腹膜の炎症
  • 冷えによるお腹の張りや吐き気

有効性(試験・臨床報告より)

● 人での確認(内視鏡による観察)

  • 胃や腸の動きが目に見えて活発になることが確認されています

● 術後の腸の動き(イレウス)改善

  • お腹の手術のあとに起こりやすい**腸の動きの停止(イレウス)**に対して、
     発症のリスクを下げたという報告があります

● 基礎研究の結果

  • 腸の血流が増える
  • 消化ホルモン(モチリンなど)が増える

👉 ※イレウスとは…
腸の動きが止まり、便やガスが流れなくなる状態」のことです


用法・用量(のみ方)

  • 通常、**成人は1日27g(3g×9包)**を2~3回に分けて、食前または食間に服用します
  • 子どもや高齢者、小柄な方は、体格に合わせて医師が量を調整することがあります
  • 顆粒が飲みにくい場合は、ぬるま湯で練ってから服用するとスムーズです

使用できない方(禁忌)

明確な「絶対禁忌」はありませんが、以下のような方は慎重に使用する必要があります

  • 肝臓に持病がある方
     → 肝機能が悪化する恐れがあるため注意が必要
  • 妊娠中の方
     → 医師が「治療のメリットが大きい」と判断した場合のみ使用します
  • 体質が合わない方(証が合わない)
     → 効果が出にくく、副作用が出ることもあります

飲み合わせに注意が必要な薬

組み合わせ注意点
他の漢方薬同じ生薬が含まれている場合、成分の取りすぎになる可能性があります
肝臓に影響する薬一部の脂質異常症(コレステロール)治療薬抗結核薬など
抗凝固薬(血をサラサラにする薬)消化管出血(胃や腸の出血)を起こしやすくなる可能性があります

副作用とその頻度

● 重い副作用(頻度不明/まれ)

副作用主な症状対応
間質性肺炎咳、息切れ、発熱など服用を中止して、**胸部の画像検査(CTなど)**で確認
肝機能障害・黄疸AST/ALTの上昇、だるさ服用を中止し、肝機能の血液検査を行います

● その他の副作用(頻度不明)

  • 発疹、じんましんなどのアレルギー反応
  • 胃の不快感、吐き気、嘔吐
  • お腹の張り、痛み、下痢などの消化器症状

👉 ※副作用はまれですが、咳・息切れ・強いだるさなどが現れた場合は、すぐ医師に相談してください。


まとめ

大建中湯は、「冷え」や「お腹の痛み」を伴う胃腸機能の低下に効果的な漢方薬です。
現代医学的な研究でも、**術後の腸の動き改善(イレウス予防)**などの作用が確認されています。


● 飲み方のポイント

  • 1日27g(3g×9包)を2〜3回に分けて服用
  • 食前または食間に飲む
  • 飲みにくい場合は、ぬるま湯で練って飲むのもOK

● 使用上の注意点

  • 肝機能や呼吸器に不調がある方は注意
  • 他の漢方薬や処方薬との重複チェックが重要

最後に

お腹の冷えや痛みがなかなか良くならない
手術のあと、腸の動きが悪くてつらい

そんなときは、大建中湯が力になる可能性があります。

当院のオンライン診療では、
症状・体質・生活スタイルに合わせて、他のお薬とのバランスも含めて安全な処方を行っています。

どうぞお気軽にご相談ください。

参考文献・出典

ツムラ製品インタビューフォーム:製剤情報、臨床試験、作用機序などの詳細が掲載されています
→ ツムラ公式サイトまたはPMDAサイトで閲覧可能

JAPIC添付文書(PDF):効能・副作用・用法・禁忌などが記載された正式文書
https://www.japic.or.jp/ (医療関係者向け)

KEGG DRUG:D07003
https://www.genome.jp/db/kegg/drug/D07003.html

PubMedなどの医学論文
キーワード:「Daikenchuto」「postoperative ileus」「intestinal motility」などで多数報告あり

よくある質問(Q&A)


大建中湯は、他の似た漢方薬と比べてどんな強みがありますか?

大建中湯は、腹部の「冷え」と「胃腸の機能低下(動きが悪い)」の両方に対応できるのが大きな特長です。特に以下の点が他の漢方製剤(例:小建中湯、六君子湯など)と異なります:

  • 腸の血流を増やす作用(術後のイレウス予防でも研究あり)
  • 強い冷えに対応:乾姜(しょうが)と膠飴で温め効果が高い
  • 消化管ホルモン分泌を促進し、腸の動きを回復させる
  • 「腹が冷えて痛い」という症状に特化

小建中湯が虚弱体質の小児にも使われるのに対し、大建中湯はより強く冷えて胃腸の動きが弱い成人向けに適しています。

大建中湯の先発薬はいつ発売されましたか?

ツムラ大建中湯エキス顆粒(医療用)は、1985年(昭和60年)5月31日に医療用として製造承認されました。

大建中湯を30日間処方された場合の薬価と自己負担額の目安は?

成人用の通常量(1日27g)で30日分処方された場合:

製品名薬価(1gあたり)1日薬価30日薬価自己負担(3割)目安
ツムラ大建中湯13.7円約370円約11,000円約3,300円
コタロー大建中湯8.9円約240円約7,200円約2,160円

※調剤技術料・薬剤服用歴管理料などは含まれていません。実際の負担額は医療機関によって異なります。

大建中湯の効果はどのくらいで現れ、どれくらい続きますか?

作用発現時間と持続時間の目安:

  • 作用発現時間:服用後30分~1時間以内に消化管運動の改善を感じるケースが多いです(特に手術後など)。
  • 持続時間:数時間程度の持続があり、通常は1日2~3回の服用で効果を維持します。

※体質や症状によって個人差があります。

妊娠中でも大建中湯は使えますか?

妊娠中の使用は慎重に判断すべきとされています。

漢方でも胎児に影響する可能性があるため、必ず医師に相談してください

使用の可否:医師が「治療上の有益性が危険性を上回る」と判断した場合に限り使用可能

注意点:安全性データが十分ではなく、自己判断での使用は避けるべきです

授乳中でも大建中湯は飲めますか?

授乳中の使用は可能ですが、慎重な対応が必要です

注意点:乳児に下痢などの影響が出る場合があるため、授乳の一時中止を含め検討されることがあります

母乳への移行:一部の生薬成分が母乳中に移行する可能性あり(明確なデータはなし)

使用の可否:医師の判断で必要とされる場合に使用されます

子どもにも大建中湯は使えますか?

小児への使用は、医師の判断に基づいて慎重に行われます

  • 通常は成人量(1日27g)を体重や年齢に応じて減量
  • 小児を対象とした十分な臨床試験は実施されていません
  • 小建中湯の方が小児には一般的に使われやすい傾向があります