「便秘でお腹が苦しい…」そんな時の漢方、大黄甘草湯ってどんな薬?

「便秘でお腹が苦しい…」
そんな時の漢方、大黄甘草湯ってどんな薬?

便秘で大黄甘草湯が処方されました。

便秘症で使われるシンプルな配合の便秘薬ですね。

偽性アルドステロン症には注意が必要ですが

大黄甘草湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)とは

大黄甘草湯は、古典医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』に記された漢方処方を、現代向けに製剤化した漢方薬です。
ダイオウ(大黄)とカンゾウ(甘草)の2種類の生薬のみで構成されており、主に便秘症の改善を目的として使用されます。

現在は、ツムラや大杉製薬などから顆粒剤・錠剤として発売されています。


大黄甘草湯の特徴

● 伝統処方を現代品質で

ツムラの製剤では、水だけで有効成分を抽出し、乾式造粒法(溶媒を使わない製法)によって顆粒化。
これにより、溶媒残留の心配がなく、携帯・服用のしやすさが実現されています。

● 成分は2種類だけ

生薬がダイオウとカンゾウの2つだけのため、相互作用や体質への適合判断がしやすい点も特徴です。

● 便秘症への高い有用性

臨床試験でプラセボ(偽薬)を大きく上回る効果が認められています。
(詳細は「有効性」参照)


効能・効果

  • 便秘症

体質(証)を考慮しながら、便秘による腹部膨満感硬便などを改善します。


有効性(臨床試験データ)

国内で行われた二重盲検試験(成人に1日7.5gを2週間投与)における改善率:

有効率症例数
大黄甘草湯86.4%38/44名
プラセボ(偽薬)44.7%21/47名

▶ 大黄甘草湯の方が明らかに高い効果を示し、短期間でも実感しやすい処方です。


用法・用量

  • 通常、成人は1日7.5g2~3回に分けて、食前または食間に服用します。
  • 年齢・体重・症状に応じて調整が可能です。
  • ダイオウの瀉下(便通促進)作用には個人差があるため、最初は少量から開始することが推奨されます。

使用できない方(禁忌)

以下の方は服用を避けてください。

  • 妊婦または妊娠の可能性がある方
     → ダイオウに子宮収縮作用があり、流早産のリスクがあります。
  • 明らかな下痢・軟便がある方
     → 症状がさらに悪化する可能性があります。
  • 著しい胃腸虚弱・体力低下がある方
     → 副作用が起こりやすいため、慎重な判断が必要です。

飲み合わせに注意が必要な薬

以下の薬やサプリとの併用には注意が必要です。

● カンゾウ含有製剤

(例:芍薬甘草湯、抑肝散、補中益気湯 など)

● グリチルリチン酸を含む市販薬やシロップ

偽アルドステロン症・低カリウム血症・ミオパチーのリスクが高まります。
血圧や血清カリウムのチェックが必要です。

● ダイオウを含む他の便秘薬

下痢や腹痛の悪化に注意が必要です。


副作用と発生頻度

重篤度主な症状頻度
重大偽アルドステロン症(浮腫・血圧上昇・低K血症)、ミオパチー(筋力低下など)不明(報告ベース)
その他食欲不振、腹痛、下痢など不明

▶ 特に、カンゾウによるカリウム低下に注意が必要です。
▶ 異常を感じたら服用を中止し、医師に相談してください。


まとめ

大黄甘草湯は、

「刺激性下剤は使いたくないけれど、便秘をすぐ改善したい」

という方に適した、有効率の高い漢方治療薬です。

  • 成分がシンプルで相互作用を把握しやすく、
  • 二重盲検試験でも高い効果を実証、
  • ただし、カンゾウによる電解質異常ダイオウによる強い便通作用には注意が必要です。


便秘でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

参考文献・出典

医療用添付文書(JAPIC、PMDA)
 → ツムラ大黄甘草湯エキス顆粒(医療用):PMDA添付文書サイト

KEGG DRUG
 → D06757 大黄甘草湯エキス

三好秋馬ほか, 消化器科, 22 (3), 314-328, (1996)
 → 臨床試験データ(便秘症に対する有効性を示した二重盲検比較試験)

よくある質問(Q&A)


大黄甘草湯とはどんな薬?どんな時に使うの?

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)は、便秘症の改善を目的とした漢方薬です。
古典医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載されている処方をもとに、**ダイオウ(便通を促す)とカンゾウ(体の調整・炎症抑制)**の2つの生薬のみで構成されています。

この薬の同じ系統の他の薬と比べた強みは?

他の便秘系漢方薬(例:防風通聖散、麻子仁丸など)に比べて:

  • 成分が2種類だけなので相互作用が少なく、体質への合う・合わないの判断がしやすい
  • 作用発現が早めで、短期間の使用で効果を実感しやすい
  • ツムラ製品では溶媒不使用の乾式造粒法により、安全性と服用のしやすさに配慮されている

➡ 比較的「シンプルで反応が読みやすい」漢方と言えます。

大黄甘草湯の先発品が発売されたのはいつ?

医療用としてのツムラ製「大黄甘草湯エキス顆粒(医療用)」は、
1985年(昭和60年)5月31日に製造承認されています。

1か月(30日)処方時の薬価と実際の目安価格は?

製品名薬価(公定価格)30日処方量目安自己負担額(3割)
ツムラ大黄甘草湯エキス顆粒(医療用)8円/g7.5g×30日=225g約540円前後
オースギ大黄甘草湯エキスG(顆粒)14.8円/g同上約999円前後
オースギ大黄甘草湯エキスT錠7円/錠1日12錠×30日=360錠約756円前後

※ 実際の金額は調剤料・薬局加算などを含めると変動します。

大黄甘草湯は飲んでどのくらいで効く?持続時間は?

通常、服用から6〜12時間以内に便意が現れるケースが多いです(就寝前の服用で翌朝排便があるなど)。
作用の持続は1回の服用で数時間程度とされますが、個人差もあります。

妊娠中に大黄甘草湯を使ってもいいの?

妊娠中の使用は基本的に推奨されません。

安易な自己判断での使用は避け、便秘がつらい場合は産婦人科で代替策を相談してください。

含有するダイオウには子宮収縮作用や骨盤内臓器への血流促進作用があり、
 → 流産・早産のリスクがあるためです。

授乳中でも服用して大丈夫?

慎重な判断が必要です。

  • ダイオウ中のアントラキノン誘導体が母乳に移行する可能性があり、
     → 授乳中の赤ちゃんが下痢を起こすことがあります。
  • 医師と相談し、必要に応じて授乳の中断や代替薬の検討が望まれます。

子どもに使ってもいいの?

原則として、小児への使用は慎重に。

  • 小児対象の十分な臨床試験は行われていません。
  • どうしても使用が必要な場合は、体重や年齢に応じて医師が適切に調整する必要があります。