大承気湯はどんな便秘に使う?効果・飲み方・副作用をわかりやすく

大承気湯はどんな便秘に使う?
効果・飲み方・副作用をわかりやすく

頑固な便秘で『大承気湯』を処方されました。

西洋薬でも出ない頑固な便秘のとき、切り札で使われる漢方薬ですね。

大承気湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

大承気湯(だいじょうきとう)とは?

**大承気湯(だいじょうきとう)**は、

  • 厚朴(こうぼく)
  • 枳実(きじつ)
  • 大黄(だいおう)
  • 芒硝(ぼうしょう)

という4つの生薬からなる漢方薬です。

古典『傷寒論(しょうかんろん)』『金匱要略(きんきようりゃく)』にも記載があり、「陽明腑実証(ようめいふじつしょう)」という、お腹が張って固く、便秘が強い状態に使われてきました。

現在は、ツムラや小太郎漢方製薬などから顆粒(かりゅう)タイプの製剤が販売され、保険適用の便秘治療薬として使われています。


大承気湯の特徴

✅ 強い便通改善(下剤)作用

  • 大黄と芒硝の組み合わせが、腸に水分を引き込み、腸を動かして排便を促します。
  • 効果は早く、服用後数時間以内に効くこともあります

✅ 飲みやすい顆粒(かりゅう)タイプ

  • ツムラ製は味やにおいが控えめ
  • 有効成分の比率は、水で煎じた本来の漢方に近く、服用もしやすい設計です。

✅ “気滞(きたい)+実熱(じつねつ)”タイプ向け

  • ストレスや暴飲暴食でお腹が張り、固い便が出にくい体質に合います。

効能・効果

次のような症状の便秘に使われます:

  • お腹がかたく、つかえたように感じる
  • 太っていて、便秘になりやすい

主な適応:

  • 常習性便秘・急性便秘
  • 高血圧・神経症にともなう便秘
  • 食あたり(食中り)など

有効性のデータ

▶ ICU(集中治療室)での調査

  • 重症患者78人に投与したところ、81%で排便があり、量も明らかに増えた
    (出典:PMC)

▶ 症例報告より

  • ひどい便秘やお腹の張りが、服用後すぐに改善されたという報告があります
    (出典:J-STAGE)

🔍 ポイント
即効性がありますが、「体質に合うか」が大切です。
データ数が限られるため、過信は禁物で、医師の判断のもと使いましょう。


用法・用量

  • 成人:1日7.5g(2〜3回に分けて、食前または食間に服用)
  • 調整:症状や体格に応じて増減します

注意点:

  • 脱水を防ぐため、しっかり水分補給してください
  • 効果が強すぎる場合は、最初は半分の量からスタートし、便の出方を見て調整しましょう

使用できない方(禁忌・慎重投与)

注意が必要な人理由・リスク
妊娠中・妊娠の可能性がある方大黄・芒硝が子宮を収縮させ、流早産のリスクがあります
授乳中の方成分が母乳に移行し、赤ちゃんに下痢を起こす可能性があります
下痢・軟便気味の方、胃腸が弱い方腹痛や下痢が悪化する恐れがあります
高齢者・体力の低下した方脱水や電解質異常(でんかいしついじょう)を起こしやすく、減量での慎重な使用が必要です

飲み合わせに注意が必要なもの

組み合わせ内容・理由
他の大黄(だいおう)を含む漢方や刺激性下剤下痢や腹痛が強くなる可能性があります
利尿薬・降圧薬電解質バランスが崩れて、薬の効果が不安定になることがあります
減塩中の方芒硝(ぼうしょう)にナトリウムが含まれており、長期や大量使用で注意が必要です

副作用と発生頻度

症状頻度
食欲不振・腹痛・下痢頻度不明ですが比較的よくある副作用
電解質異常(特に低カリウム血症)長期間または大量に使った場合にまれに起こります

※どちらも早めに服用を中止し、医師に相談すれば早期に改善することがほとんどです。


まとめ

大承気湯は、

  • お腹が張って苦しい
  • 固くて出にくい便秘がつらい

という方に、短期間での使用で即効性が期待できる漢方薬です。


ただし注意点も:

  • 妊婦さんや体力のない方には不向き
  • 長期間の自己使用は避ける
  • 医師の診断のもとで使う

当院では、

  • まずは酸化マグネシウム
  • 生活習慣の見直し

などを行って、それでも効果が出にくい方に、体質に合うかを確認した上で“切り札”として処方しています。


💬 便秘でお悩みの方へ

「いつもお腹が張って苦しい」「何を飲んでも効かない」など、お困りの症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
オンライン診療でも対応しております。

参考文献・出典

【添付文書(ツムラ大承気湯)】
 → https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

【KEGG DRUG データベース】
 → 大承気湯:D07006
 https://www.genome.jp/db/kegg/drug

【漢方製剤情報(ツムラ・小太郎製薬)】
 → 各製薬企業の医療関係者向けページ

【日本東洋医学会雑誌/J-STAGE掲載論文】
 → ICU患者への使用実績や症例報告あり

【医中誌・PubMed】
 → “Daijokito” “Dai-joki-to” “Da Cheng Qi Tang”で検索可能

よくある質問(Q&A)


大承気湯は他の漢方便秘薬と比べてどんな強みがありますか?

大承気湯は、他の便秘に使われる漢方薬(防風通聖散・潤腸湯・麻子仁丸など)と比べて、即効性のある強い瀉下作用が特長です。
特に「陽明腑実証」と呼ばれる、お腹が張ってカチカチに便が溜まっている状態に適しています。

【位置づけ】酸化マグネシウムや他の漢方で効かない便秘の“切り札”

【強み】短時間で排便効果が期待できる(数時間以内に効くことも)

大承気湯の先発品はいつ発売されたの?

医療用の**ツムラ大承気湯エキス顆粒(医療用)**は、1986年に承認・薬価収載され、現在も保険診療で使用されています。
その他、小太郎漢方製薬などからも同じ処方の製品が出ています。

大承気湯を30日処方された場合、薬価と自己負担はいくら?

ツムラ大承気湯エキス顆粒の薬価は10.8円/gです。
1日量7.5gで計算すると以下の通りです。

  • 【30日分薬価】:
     10.8円 × 7.5g × 30日 = 2,430円
  • 【自己負担の目安(3割負担)】:
     2,430円 × 0.3 = 約730円

※薬局での調剤料等は含みません。

大承気湯は飲んでどれくらいで効く?効果はどのくらい持続する?

服用後、早ければ2~6時間以内に排便が起こることもあります。
これは、大黄・芒硝が腸に水分を引き込み、ぜん動を促すことで速やかに作用するためです。
持続時間には個人差がありますが、数回の排便で症状が改善するケースが多いです。

妊娠中に大承気湯は使っていいの?

基本的に使用は避けるべきです。
大承気湯に含まれる**大黄(子宮収縮作用)および芒硝や無水ボウショウ(骨盤内臓器の充血作用)**により、流産や早産のリスクがあります。
妊娠中は、酸化マグネシウムなど安全性が高い便秘薬が推奨されます。

授乳中に大承気湯を飲んでも大丈夫?

注意が必要です。
大承気湯に含まれる大黄の成分(アントラキノン類)は母乳中に移行することがあり、乳児に下痢を引き起こす可能性が報告されています。
授乳を継続するか中止するかは、医師と相談して判断する必要があります。

子どもに大承気湯を使ってもいいの?

基本的には推奨されません。
添付文書によると、小児を対象とした臨床試験は行われておらず、安全性が確立していません。
また、大黄や芒硝による強い下剤作用は、脱水や腹痛を招く可能性があります。
小児の便秘には、年齢に応じた安全な薬剤や生活指導が優先されます。