頭がガンガンする片頭痛に…イミグラン(スマトリプタン)はどんな薬?
頭がガンガンする片頭痛に…
イミグラン(スマトリプタン)はどんな薬?

片頭痛で『イミグラン』を使っています。

日本で初めてのトリプタン製剤で、片頭痛に使用されます。
注射剤など様々なタイプがあることが特徴です。
イミグラン(スマトリプタン)はオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
スマトリプタン(イミグラン)とは
スマトリプタンは 「トリプタン系」と呼ばれる片頭痛治療薬で、英国グラクソ・スミスクライン社が開発しました。
脳内のセロトニン 5‑HT の <sub>1B/1D</sub> 受容体を選択的に刺激し、拡張した頭蓋内外の血管を収縮させて頭痛を鎮めます。
現在は日本を含む100カ国以上で承認されており、以下のように複数の剤形が利用可能です。
- 錠剤(内服)
- 点鼻液
- 自己注射キット
スマトリプタンの特徴
開発の背景と作用機序
- 1980年代、「血管拡張+神経炎症」が片頭痛の原因とされる仮説が提唱。
- それに基づき、5‑HT<sub>1B/1D</sub>受容体アゴニストとして開発されました。
選択的な血管収縮作用
- 脳血管に作用しながら、末梢血管への影響は最小限。
- 血圧や心拍数への影響はほとんどなし。
神経炎症の抑制
- CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの炎症性ペプチドの放出を抑制。
- 血管周囲の炎症を軽減します。
外来を受診せずに使える利便性
- 日本では2001年に錠剤が承認。
- 発作時に自宅で服用可能で、QOLの向上に貢献します。
効能・効果
適応症
- 片頭痛発作の治療(前兆の有無を問わず)
※群発頭痛に対する適応は皮下注射剤のみです(錠剤は非対応)。
有効性(臨床試験データ)
試験区分 | デザイン | 頭痛改善率(4時間後) | 副作用発現率* |
---|---|---|---|
国内第Ⅱ相 | 50mg / 100mg vs プラセボ | 71% / 67% | 27–30% |
海外第Ⅱ相 | 同上 | 77% / 77% | 21–31% |
海外第Ⅲ相 | 50mg vs プラセボ | 63% | 15% |
*主な副作用:悪心・倦怠感・動悸など(多くは軽度・一過性)
用法・用量
- 標準:発作時に 50mg を1回経口服用
- 追加投与:効果が不十分な場合は、2時間以上あけて追加服用可
- 最大用量:1日200mgまで
- 予防目的には使用不可
他剤形との併用間隔
- 錠剤 → 注射/点鼻:2時間以上あける
- 注射 → 錠剤:1時間以上あける
使用できない方(禁忌)
以下の方は服用できません:
- スマトリプタンに過敏症の既往歴がある方
- 心血管疾患(心筋梗塞・狭心症・脳卒中など)のある方
- 末梢血管障害、重篤な肝障害、未治療の高血圧
- MAO阻害薬の服用中または中止後2週間以内
- エルゴタミン製剤・他のトリプタン系薬剤を24時間以内に使用している方
- 10歳未満の小児、特殊型の片頭痛(片麻痺型など)
飲み合わせに注意が必要な薬
併用薬 | 影響・理由 | 対応 |
---|---|---|
SSRI/SNRI | セロトニン症候群のリスク | 併用可、体調に注意 |
β遮断薬/Ca拮抗薬 | 薬物動態への影響なし | 通常通り使用可 |
痙攣閾値を下げる薬 | てんかん様発作のリスク | 医師と相談のうえ使用 |
副作用と発生頻度
国内承認時データ(152例)
- 副作用総頻度:31.6%
- 主な症状:
- 身体各部の痛み(6.6%)
- 悪心・嘔吐(6.6%)
- 動悸・倦怠感(各4.6%)
使用成績調査(2,878例)
- 副作用総頻度:12.6%
- 主な症状:
- 悪心(3.1%)
- 眠気(2.6%)
重大な副作用(極めてまれ)
- アナフィラキシー
- 虚血性心疾患様症状(胸痛・狭心症)
- てんかん様発作
- 薬剤の使用過多による頭痛
💡 ポイント:
多くは軽度・一過性ですが、胸痛・強い動悸などがあればすぐに受診を。
まとめ
- スマトリプタン(イミグラン)は片頭痛の第一選択薬
- 作用機序:血管収縮+神経炎症抑制
- 自宅で服用可能な錠剤はQOLを大きく向上
- 心血管疾患との併用や禁忌薬に注意
- 副作用は軽度が中心、重篤例はまれ
参考文献・出典
厚生労働省:医薬品リスク管理計画(RMP)
PMDA(医薬品医療機器総合機構):医薬品添付文書・インタビューフォーム
KEGG MEDICUS(医療者向け薬剤データベース)
日本頭痛学会のガイドライン
日本産婦人科医会「妊娠と薬」データベース
LactMed(米国の母乳中薬物移行データベース)※英語
よくある質問(Q&A)
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スマトリプタンは、同じ系統の片頭痛薬と比べてどんな強みがあるの?
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スマトリプタンは「トリプタン系」の中でも最初に開発された薬で、有効性や安全性が長年にわたり確認されているのが強みです。
また、脳血管に選択的に作用し、末梢血管や心臓への影響が少ない点や、炎症を抑える作用(CGRP放出抑制)もあることが評価されています。さらに、錠剤・点鼻・自己注射など剤形が豊富で、症状の強さやタイミングに応じて使い分けられるのも利点です。
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スマトリプタン(イミグラン)の先発品はいつ発売されたの?
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イミグラン注射剤は2000年1月に日本で承認・発売され、
イミグラン錠(内服薬)は2001年6月に承認されました。世界初の承認は1990年代初頭のニュージーランドです。
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1か月(30日)分処方されたときの薬価や自己負担額の目安は?
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イミグラン錠50mg(先発品)の薬価は283.8円/錠です。
- 30日分(1日1錠)の薬価合計:8,514円
- 自己負担(3割負担の場合):約2,550円
後発品を選んだ場合、薬価は124.8〜142.1円/錠と半額以下になり、
自己負担額も1,200円前後に抑えられます。※薬局での技術料や管理指導料等は別途かかる場合があります。
※当院では月10日処方となります
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作用が出るまでの時間や、どれくらい効果が続くの?
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スマトリプタン錠は、服用後1.5〜2時間以内に効果が出始めるのが一般的です。
効果のピークは服用から2〜4時間後に見られます。持続時間はおおよそ4〜6時間程度で、症状の程度により個人差があります。
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妊娠中にスマトリプタンは使えるの?
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基本的には、妊娠中の使用は必要性がある場合に限り医師が判断して使用します。
海外の研究では、大きな奇形リスクは報告されていませんが、妊婦への投与データは限られているため、**「使えるけど慎重に」**という立場です。
使うかどうかは、症状のつらさと安全性のバランスを医師と相談して決める必要があります。
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授乳中にスマトリプタンを飲んでも大丈夫?
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はい、授乳中でも使用は可能とされています。
ただし、スマトリプタンは母乳中に移行することが確認されており、
「授乳後に服用し、12時間は授乳を避ける」のが一般的な指導です。搾乳・廃棄や、服薬タイミングの調整が必要な場合もあるため、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
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子ども(小児)にも使える薬なの?
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10歳未満の子どもには使用できません。
10歳以上~17歳以下では臨床試験がありますが、効果がはっきりしなかったため、日本では小児への適応はありません。
また、小児の片頭痛には原因が異なるケースも多いため、大人用の薬を自己判断で使うのは絶対に避けましょう。
