胃酸の逆流や胸やけに|ネキシウムで楽になる?薬の効果と注意点を解説
胃酸の逆流や胸やけに
ネキシウムで楽になる?薬の効果と注意点を解説

胸やけで『ネキシウム』を使っています。

個人差の少ない安定した胃酸抑制効果を示し、小児でも唯一使える
胃酸分泌抑制薬です。
ネキシウムはオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
エソメプラゾール(ネキシウム®)とは
エソメプラゾールは、「プロトンポンプインヒビター(PPI)」と呼ばれる胃酸分泌抑制薬の一つです。
先に発売されたオメプラゾールの“S体(光学異性体の片方)”のみを取り出して製剤化されており、
同じ用量でも効き目に個人差が少ないのが特徴です。
製剤は以下の2種類:
- カプセル(10mg/20mg)
- 小児や嚥下困難な方でも服用しやすい「懸濁用顆粒」
エソメプラゾールの特徴
- オメプラゾールからの改良型PPI
- ラセミ体(R体+S体)のうち、有効なS体のみを使用
- 血中濃度のばらつきが少なく、安定した効果を発揮
- 世界125か国以上で承認(2000年スウェーデンで発売)
- 日本では2011年に承認
- オメプラゾールと同等の効能を取得
- 国内で唯一、1歳以上の小児適応を有するPPI
- 2024年には小児の維持療法も承認
主な効能・効果
成人の適応
- 逆流性食道炎(治療・維持)
- 非びらん性胃食道逆流症(NERD)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・吻合部潰瘍
- Zollinger-Ellison症候群
- NSAIDsや低用量アスピリン使用時の潰瘍再発抑制
- ピロリ除菌補助(3剤併用療法)
小児(1歳以上)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・吻合部潰瘍
- 逆流性食道炎(治療・維持)
- NERD
- Zollinger-Ellison症候群
- 潰瘍再発抑制(NSAIDs・LDA併用時)
有効性(臨床試験より)
- 逆流性食道炎の治癒率(8週)
エソメプラゾール20mg:87.3%(オメプラゾール20mg:87.4%) - 逆流性食道炎の維持療法(24週)
エソメプラゾール20mg:92.0% > オメプラゾール10mg:82.7% - NSAIDs継続患者の潰瘍再発抑制(24週)
エソメプラゾール20mg:96.0% vs プラセボ:64.4% - 低用量アスピリン継続患者(48週)
エソメプラゾール20mg:98.3% vs プラセボ:81.2% - 小児試験(1〜14歳)
上部消化器症状の40%以上が消失
維持療法(32〜44週)の再発率:0〜11%
用法・用量の目安
状態 | 成人 | 小児(1歳以上)* |
---|---|---|
逆流性食道炎 | 20mg 1日1回(最大8週) 維持:10〜20mg 1日1回 | 体重20kg未満:10mg 20kg以上:10〜20mg |
胃・十二指腸潰瘍 | 20mg 1日1回(8週/6週) | 同上 |
NERD | 10mg 1日1回(4週) | 10mg 1日1回(4週) |
潰瘍再発抑制(NSAIDs・LDA) | 20mg 1日1回 | 10mg 1日1回 |
ピロリ除菌補助 | 20mg + AMPC 750mg + CAM 200〜400mg 1日2回×7日 | — |
※ 体重により調整。嚥下困難時は懸濁用顆粒の使用が可能です。
使用できない方(禁忌)
- 本剤にアレルギーがある方
- アタザナビル硫酸塩(レイアタッツ®)
- リルピビリン塩酸塩(エジュラント®)
※上記を服用中の方は併用できません
飲み合わせに注意が必要な薬
効果が強まる/副作用リスク増加
- ワルファリン
- フェニトイン
- ジアゼパム
- タクロリムス
- メトトレキサート(高用量)
吸収・効果が下がる可能性あり
- イトラコナゾール
- チロシンキナーゼ阻害薬(ゲフィチニブなど)
- ネルフィナビル
血中濃度が下がる(作用減弱)
- セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)含有製品
※ 服薬中の薬がある場合は、医師または薬剤師へご相談ください。
副作用と頻度
分類 | よくある(1–5%未満) | まれ(1%未満) | 重篤(頻度不明〜極めてまれ) |
---|---|---|---|
消化器 | 腹痛・下痢・便秘 | 悪心・鼓腸 | 顕微鏡的大腸炎 |
皮膚 | 発疹・かゆみ | 光線過敏症 | SJS・TEN |
肝機能 | AST/ALT上昇 | — | 劇症肝炎・肝不全 |
血液 | — | 白血球減少 | 汎血球減少・無顆粒球症 |
その他 | 頭痛・めまい | 倦怠感 | 横紋筋融解症、低Mg血症、視力障害 |
注意喚起:
ショック症状、激しい発疹、呼吸困難、急な筋肉痛や脱力感が出た場合は、速やかに受診してください。
まとめ
- エソメプラゾール(ネキシウム®)は、オメプラゾールの改良型PPI
- 個人差の少ない安定した胃酸抑制効果を発揮
- 小児にも使用可能な国内唯一のPPI
- GERD・消化性潰瘍・ピロリ除菌・潰瘍予防まで幅広い適応
- 臨床試験でオメプラゾール以上の再発抑制効果を確認
- 1日1回の服用で済むため、服薬負担が少ない
- 併用禁忌薬や重篤な副作用には注意が必要
参考文献・出典
医薬品インタビューフォーム(アストラゼネカ社)
添付文書(PMDA、JAPIC)
医療用医薬品解説書(KEGG、日経DI)
日本消化器病学会の「GERD診療ガイドライン」
PubMedでのキーワード検索例:「Esomeprazole efficacy」「PPI vs esomeprazole」
よくある質問(Q&A)
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ネキシウムの同じ系統(PPI)の薬と比べた強みは?
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ネキシウムは、プロトンポンプインヒビター(PPI)の一種で、オメプラゾールの“S体”のみを取り出した改良型の薬です。
他のPPI(オメプラゾール、ランソプラゾールなど)に比べて以下の強みがあります:- 体内での吸収や効果に個人差が少ない(安定した血中濃度)
- 1日1回の服用でしっかり胃酸を抑える
- 1歳以上の小児にも使える日本で唯一のPPI(2024年に小児維持療法も承認)
胃酸の分泌が強く、症状がなかなか治まらない方に向いている薬です。
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ネキシウム(エソメプラゾール)はいつ発売されたの?
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ネキシウムは2000年にスウェーデンで初めて承認されました。
日本国内では2011年7月に承認・販売が開始されました。
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ネキシウムの薬価は?30日分の自己負担はいくらくらい?
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(※薬価(2024年6月時点)をもとに計算しています。
製剤名 薬価(1カプセル) 1日1回30日分 自己負担(3割負担) ネキシウムカプセル10mg 34.7円 約1,041円 約310円 ネキシウムカプセル20mg 59.3円 約1,779円 約535円 ※後発品(エソメプラゾールカプセル)は10mg=21.7円、20mg=37.8円でより安価です。
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ネキシウムは飲んでどれくらいで効く?持続時間は?
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作用発現時間: 約1〜2時間で胃酸抑制効果が始まります
持続時間: 効果は約24時間続きます。1日1回の服用で済むのが利点です
定常状態: 3日程度の連続服用で安定した効果になります
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妊娠中でもネキシウムは使える?
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原則として、妊娠中は医師と相談のうえで使用を検討します。
- 動物実験で催奇形性は報告されていませんが、ヒトでの十分な安全性データはありません
- 治療上の有益性がリスクを上回ると判断された場合のみ使用可
妊娠中に胃酸逆流がつらい場合は、まずは生活習慣の改善(食事・姿勢)などを優先し、必要なら医師がPPI使用を慎重に判断します。
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授乳中にネキシウムは飲んでも大丈夫?
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授乳中の使用は可能とされますが、注意が必要です。
- ネキシウムのラセミ体(オメプラゾール)は母乳に移行することが動物実験で確認されています
- 人への影響は不明ですが、授乳継続の可否を含めて医師と相談のうえで使用するのが基本です
必要に応じて、「授乳後に服用」「一時的に搾乳する」などの方法が取られることもあります。
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ネキシウムは子どもにも使える?何歳から?
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1歳以上の小児から使用可能です。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・逆流性食道炎・NERDなどの治療に適応あり
- 体重に応じて10mgまたは20mgを1日1回服用します
- 小児は薬を飲み込みづらい場合があるため、懸濁用顆粒を使うケースもあります
※低出生体重児・乳児(1歳未満)に対する安全性は確立していません。
