多汗症の内服薬?プロ・バンサインの効果と注意点を解説

多汗症の内服薬?|
プロ・バンサインの効果と注意点を解説

全身の汗で困っており、『プロ・バンサイン』を使っています。

古くからある多汗症の保険診療薬です。

即効性もあるので、頓服で内服もおススメです。

夏は薬局の在庫が無くなり処方制限がかかります。

胃など他の臓器にも影響を与えるので、

長期処方は致しませんが、プロ・バンサインはオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

プロ・バンサインとは

  • 一般名:プロパンテリン臭化物(Propantheline Bromide)
  • 薬効分類:抗コリン性鎮痙剤(ATCコード:A03AB05)
  • 発売年:1953年
  • 剤形・薬価:15 mg糖衣錠のみ。

作用機序

副交感神経のムスカリン受容体を競合的に遮断し、胃腸の平滑筋や分泌腺の活動を抑制します。


プロ・バンサインの特徴

特徴内容
速やかな効果発現空腹時に内服すると約1時間後に最高血中濃度に到達し、動悸・発汗抑制が早く現れます。
強力な抗コリン作用in vitro試験で同作用の薬であるアトロピンの約2倍の平滑筋弛緩作用を示します。
苦味対策糖衣錠で苦味をマスキング。粉砕投与は推奨されません(糖衣除去により苦味・吸湿↑)。
経済性30日服用しても薬剤費は数百円程度と非常に経済的です。

効能・効果

胃腸系疾患

  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 胃酸過多症
  • 幽門痙攣
  • 胃炎・腸炎
  • 過敏性腸症候群
  • 膵炎・胆道ジスキネジー

泌尿器系

  • 夜尿症/遺尿症

発汗異常

  • 多汗症(全身性・局所性)

有効性(臨床試験)

病態試験概要主な結果
十二指腸潰瘍ランダム化比較試験(n=71)でシメチジンと比較6週後の潰瘍治癒率:86%(シメチジン94%)
多汗症症例報告やシリーズが中心。RCTは存在せず、エビデンスは限定的エビデンスに乏しく、説明と同意が必要です。

ポイント
・多汗症では「まず内服で試したい」患者に処方される傾向があります。


用法・用量

  • 通常成人:1回15mg(1錠)を1日3〜4回
     (毎食30分前+就寝前が一般的)
  • 用量調整:年齢・症状により適宜増減
     → 高齢者は副作用リスクが高いため低用量から開始

使用できない方(禁忌)

カテゴリー具体例注意点
眼科閉塞隅角緑内障眼圧上昇により失明リスクあり
泌尿器前立腺肥大+排尿障害尿閉が悪化する恐れあり
循環器重篤な心疾患心悸亢進のリスク
消化器麻痺性イレウス腸閉塞を悪化させる可能性あり

飲み合わせに注意が必要な薬

相手薬併用リスク対応
三環系抗うつ薬/フェノチアジン系薬抗コリン作用の相加で副作用↑投与量調整+症状観察
MAO阻害薬抗コリン作用が増強される可能性併用可否の再検討
ジゴキシン/メチルジゴキシン吸収↑で血中濃度上昇・不整脈リスクあり血中濃度モニター・慎重投与が必要

副作用と頻度

頻度主な症状
5%以上口渇・便秘・眼の調節障害
0.1〜5%未満頭痛、めまい、眠気、腹部膨満、胸やけ、排尿障害、倦怠感
頻度不明心悸亢進、発疹、顔面潮紅、高体温(発汗抑制による)

注意
発汗抑制のため高温環境では熱中症リスクが高まります。水分補給・室温管理を必ず指導しましょう。


まとめ

多汗症に使う際は、無治験・エビデンス不十分であることの説明が必須
 →効果が乏しければ外用薬・ボトックスなどに切り替えることも検討を大切です。

プロ・バンサインは1953年から使われているロングセラー抗コリン薬

胃腸のけいれん、多汗症に低価格で効果が期待できる内服薬

緑内障・排尿障害などの禁忌と、抗コリン性副作用には注意


参考文献・出典

PMDA 添付文書

KEGG DRUG データベース(D00481)

JAPIC 医薬品インデックス

PubMed掲載論文(例:十二指腸潰瘍治療に関する比較試験など)

よくある質問(Q&A)

この薬は他の似た薬と比べてどんな強みがあるの?

プロ・バンサインは抗コリン薬の中でも古くから実績があり、即効性と強い作用が特徴です。特にアトロピンなどと比較して、胃腸のけいれんや多汗症への効果が強いとされています(in vitroでアトロピンの約2倍の平滑筋弛緩作用)。

先発薬はいつから使われているの?

プロ・バンサイン(先発品)は1953年に日本で発売されており、70年以上使用されている処方薬です。

1か月使ったらどれくらいの費用がかかるの?

1錠あたりの薬価は6.1円で、通常は1日3〜4回の服用です。
費用の目安(30日分)

  • 自己負担3割の場合:約220円前後
  • 自己負担1割の場合:約70円前後

とても安価な薬で、費用面の負担はほとんどありません。
診察料・処方料・調剤料などは別途かかります。

効果が出るまでどれくらい? どのくらい続くの?

効果発現時間:空腹時内服で約1時間後に血中濃度がピークになります。

持続時間:血中半減期は約1.5時間。作用は比較的短く、1日3〜4回の服用が推奨されています。

妊娠中でもこの薬は飲めるの?

基本的には避けた方がよい薬です。妊娠中の使用は「治療上の有益性が危険性を上回る場合に限る」とされています。自己判断では服用せず、必ず医師に相談してください。

当院ではお出ししません

授乳中に飲んでも大丈夫?

この薬が母乳中に移行するかどうかは明確にされていません。
したがって、授乳の継続か中止を医師と相談して決めることになります。必要に応じて、一時的に授乳を中止することもあります。

当院ではお出ししません。

子どもにも使える薬ですか?

小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
そのため、子どもへの安全性や有効性は十分に確認されていないのが現状です。処方が必要な場合は、小児科医と慎重に相談する必要があります。

発汗を抑える薬と聞いたけど、夏に飲んでも大丈夫?

抗コリン作用によって発汗が抑えられるため、夏場や高温環境では熱中症のリスクが上がります。
水分補給と室温管理を意識し、体調の変化には注意してください。