わき汗に塗るだけの薬「エクロック」って?効果や副作用・使い方を解説
わき汗に塗るだけの薬「エクロック」って?|
効果や副作用・使い方を解説

脇汗がひどく『エクロック』を使っています。

脇汗を止める外用薬ですね。
塗り薬ですので、毎日使いやすい製品となります。
エクロックはオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
エクロックゲルとは
**エクロックゲル5%(一般名:ソフピロニウム臭化物)**は、
**原発性腋窩多汗症(わきの下の汗が多すぎる状態)**に対して日本で初めて保険適用となった外用薬です。
ムスカリンM3受容体を選択的にブロックすることで発汗を抑え、
日常生活における汗の悩みを軽減します。
エクロックゲルの特徴
- 1日1回、両わきに塗るだけの簡便な治療
- 手に薬液がつきにくい仕様(アプリケーター付きポンプ/ツイストボトル)
- 皮膚からの吸収が少なく、血中濃度も非常に低い
(C<sub>max</sub> ≒ 0.1–0.2 ng/mL) - M3受容体への親和性が高く、発汗抑制作用が強力
- 国内外の第Ⅲ相試験で有効性・安全性を確認済み
効能・効果
- 原発性腋窩多汗症
※気温や精神的ストレスに関係なく、過度のわき汗が出る状態です。
有効性(臨床試験結果)
試験名 | 期間 | 有効性(HDSS 1または2 + 発汗量50%以上減) | 対照群との差 |
---|---|---|---|
第Ⅲ相比較試験(n=281, 年齢13–72歳) | 6週間 | 53.9%(76/141) | +17.5%(p=0.003) |
第Ⅲ相長期投与試験(n=185) | 52週間 | 57.8% | ― |
✔ 約半数が発汗量を半減し、1年の継続使用でも効果が維持されました。
用法・用量
1日1回、各わきにポンプ1押し分をアプリケーターで塗布します。
使用時のポイント
- 手に直接出さず、必ず塗布具で塗布
- 塗布後は手についた薬液を速やかに洗い流す
- 眼に入った場合は、すぐに流水で洗い流す
使用できない方(禁忌)
禁忌対象 | 理由(抗コリン作用により) |
---|---|
閉塞隅角緑内障 | 眼圧上昇・症状悪化の恐れ |
排尿障害を伴う前立腺肥大症 | 尿閉の恐れ |
本剤成分にアレルギーがある方 | 過敏反応の恐れ |
飲み合わせに注意が必要な薬
経皮吸収量は少ないですが、抗コリン作用の増強が理論的に懸念されます。
薬剤カテゴリ | 想定される影響 |
---|---|
抗コリン薬(オキシブチニン、フェソテロジンなど) | 口渇、散瞳、便秘、排尿障害の増強 |
抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど) | 抗コリン作用の相加 |
三環系抗うつ薬・SNRI | 同上 |
CYP3A4/CYP2D6阻害薬(イトラコナゾール、パロキセチンなど) | 代謝遅延による血中濃度上昇の理論的可能性 |
※重大な相互作用の報告はありませんが、併用薬は医師・薬剤師へ必ず報告を。
主な副作用と発生頻度
発現頻度 | 内容 |
---|---|
1%以上 | 皮膚炎(6.4%)、紅斑(5.7%)、そう痒感、湿疹、刺激感 |
1%未満 | 汗疹、散瞳、霧視、口渇、排尿障害、一過性肝機能値上昇、代償性発汗など |
- 長期使用試験(52週)では、副作用発現率は42.2%
- 最多は塗布部位の皮膚炎(27.6%)
✴ 抗コリン症状(散瞳・排尿障害など)が出た場合は使用を中止し、速やかに医師へ相談を。
まとめ
全身吸収はごく少ないが、他の抗コリン薬との併用時は医師に相談をすることが大切です。
エクロックゲルは「1日1回塗るだけ」で使える、新しい多汗症治療薬
国内試験で、約半数が発汗量半減・自覚症状も軽減
禁忌(緑内障・排尿障害)は要確認、塗布部位の副作用にも注意
参考文献・出典
PMDA「医薬品インタビューフォーム(エクロックゲル5%)」
添付文書(2023年4月改訂 第7版)
「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015年改訂版」
J-STAGEに掲載の多汗症関連臨床研究報(国内外)
最新の情報はPMDA医薬品情報検索でも確認できます。
よくある質問(Q&A)
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エクロックゲルの同じ系統の薬と比べた強みは?
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A. 保険適用された“初の外用薬”で、皮膚からの吸収が極めて少なく、安全性に配慮されています。
エクロックは、M3受容体に選択的に作用する新しい抗コリン薬で、
全身への影響を抑えつつ、局所的にしっかりと発汗を抑える効果が確認されています。
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エクロックゲルはいつ発売された薬ですか?
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2020年9月に日本で製造販売承認を取得し、保険適用されました。
日本では科研製薬が販売しており、原発性腋窩多汗症に対する保険適用薬としては初の外用薬です。
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1か月(30日)処方された場合の薬価と自己負担額の目安は?
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薬価は1gあたり241.3円です。1日1g×30日使用で7,239円。自己負担は約2,170円〜(3割負担の場合)。
使用量の目安 月間薬価 自己負担(3割) 1日1g使用 約7,239円 約2,170円 ※診察料や調剤料は別途かかります。
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エクロックゲルの作用発現までの時間と、効果の持続時間は?
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作用は数日〜1週間で現れはじめ、1日1回の使用で効果は24時間程度持続します。
HDSS(多汗症重症度評価スケール)の改善は、6週間時点で約半数に認められています。
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妊娠中にエクロックゲルは使えますか?
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基本的には使用を避けるべきですが、どうしても必要な場合には医師の判断で使用されることもあります。
妊娠中の使用は“有益性が危険性を上回るとき”に限るとされています。
動物実験で胎盤を通過することが報告されています。
安全性の確立されたヒトでのデータはありません。
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授乳中でもエクロックゲルは使えますか?
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授乳中の使用は慎重に判断が必要です。母乳への移行が報告されています。
授乳を続けるか中止するかは医師と相談して判断しましょう。
動物実験で乳汁中への移行が確認されています。
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子どもにも使えますか?
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日本国内では、12歳未満の小児に対する使用実績がありません。
13歳以上であれば、第Ⅲ相試験に含まれています(試験対象は13~72歳)。
12歳未満は臨床試験の対象外とされており、使用は推奨されていません。
