NSAIDsで効かない痛みにも?トラムセットが処方されるケースとは
NSAIDsで効かない痛みにも?
トラムセットが処方されるケースとは

腰痛で『トラムセット』を使っています。

鎮痛剤で、トラマドールとカロナールを足したお薬です。
ただし、通常の鎮痛剤で効かない方に使用する薬です。
トラムセットはオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
トラムセットとは
トラムセットは、
- トラマドール塩酸塩(37.5mg)(オピオイド鎮痛薬・非麻薬)
- アセトアミノフェン(325mg)(解熱鎮痛薬)
この2成分を1錠に配合した鎮痛薬です。
使用される主な場面
- NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)などで効果が不十分な非がん性慢性疼痛
- 抜歯後の強い痛み
トラムセットの特徴
2種類の鎮痛成分を1錠に配合
異なる作用を持つ成分を組み合わせることで、より広範な痛みに対応できるのが特徴です。
日本初の「トラマドール+アセトアミノフェン」配合薬
世界68カ国以上で使用されており、日本では2011年に承認されました。
長期使用でも効果が持続
52週間の長期試験で鎮痛効果の維持が確認されています。
NSAIDsとは異なる作用機序
中枢に作用するため、胃腸への負担が比較的少ないですが、
- オピオイド由来の副作用
- アセトアミノフェンによる肝障害リスク
には注意が必要です。
効能・効果
以下の痛みに対して処方されます。
非がん性慢性疼痛
(腰痛症、変形性関節症、神経痛など)
抜歯後の疼痛
(埋伏智歯など、抜歯後に強い痛みが続く場合)
有効性(臨床試験)
慢性疼痛への効果
国内試験でプラセボより明らかに痛みの軽減期間が長いと確認されました。
長期投与試験(52週)
52週にわたり痛みのスコアが安定して低く維持されました。
抜歯後の疼痛への効果
単剤(トラマドール単独・アセトアミノフェン単独)よりも、速やかかつ高い鎮痛効果が得られました。
用法・用量
非がん性慢性疼痛の場合
- 通常:1回1錠、1日4回(4時間以上間隔)
- 最大:1回2錠、1日8錠まで
- 空腹時は避ける
抜歯後の疼痛の場合
- 初回:1回2錠
- 追加投与する場合も、4時間以上の間隔を空け、1日8錠まで
- 空腹時は避ける
投与の見直し
- 効果がなければ4週間で切り替えを検討
- 症状が改善すれば徐々に減量・中止
使用できない方(禁忌)
以下の方には原則使用できません。
- 12歳未満の小児
- 急性中毒状態(アルコール・向精神薬・睡眠薬など)
- MAO阻害薬(服用中または中止後14日以内)
- ナルメフェン塩酸塩(服用中または中止後1週間以内)
- 管理不十分なてんかん
- 重篤な肝障害
- 成分に対する過敏症
- アスピリン喘息またはその既往歴のある方(抜歯後適応時)
また、呼吸器疾患や特定の小児(18歳未満で肥満や無呼吸症候群のある場合)も使用できないことがあります。
飲み合わせに注意が必要な薬
- オピオイド系鎮痛薬や中枢神経抑制剤
→ 眠気・呼吸抑制のリスク増加 - 三環系抗うつ薬、SSRIなど
→ 痙攣やセロトニン症候群のリスク - カルバマゼピン、フェニトインなど
→ トラマドールやアセトアミノフェンの作用減弱や肝障害リスク上昇 - アルコール
→ 呼吸抑制のリスク - ワルファリンなどの抗凝固薬
→ 出血リスクやプロトロンビン時間の延長
※市販薬やサプリも含め、現在使用中の薬は必ず医師・薬剤師に伝えてください。
副作用とその頻度
よくみられる副作用(頻度高め)
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- 便秘
- めまい
- 眠気
注意すべき重大な副作用(頻度不明)
- ショック、アナフィラキシー
- 痙攣、意識消失
- 依存性・退薬症候
- 重篤な皮膚障害(TEN、SJSなど)
- 肝障害(劇症肝炎、黄疸など)
- 呼吸抑制、急性腎障害、間質性肺炎
- 喘息発作の誘発
※異変を感じたらすぐに医師または薬剤師へ相談してください。
まとめ
原因療法ではなく対症療法であることを理解し、必要に応じて医師と相談を
トラムセットは、2成分(トラマドール+アセトアミノフェン)の合剤
他の鎮痛薬で効果が不十分な痛みに処方される
NSAIDsとは異なる作用機序で、長期使用にも適応
依存性や副作用には注意が必要
参考文献・出典
PMDA添付文書(医薬品医療機器総合機構)
→ 安全性・副作用・相互作用の詳細あり
インタビューフォーム(製薬会社が提出する詳細資料)
→ 開発経緯・薬理作用・臨床試験データなど網羅
KEGG医薬品データベース
→ 成分構造や作用分類が確認可能
JAPIC日米添付文書情報
→ 海外データとの比較にも使える
よくある質問(Q&A)
-
トラムセットは他の痛み止めと何が違うの?
-
トラムセットは、「トラマドール(非麻薬性オピオイド)」と「アセトアミノフェン」という2つの成分を1錠に配合した鎮痛薬です。
一般的な痛み止め(NSAIDs)と比べて、
- 胃への負担が少ない
- 中枢に作用してがん以外の慢性痛にも効きやすい
- 作用機序が異なる2つの成分の相乗効果がある
といった点が特徴です。
NSAIDsで効きにくい痛みに使えるのが、トラムセットの大きな強みです。
-
トラムセットが発売されたのはいつ?
-
日本では2011年4月に発売されました。
海外ではさらに前から使用されており、2020年時点で世界68カ国以上で承認されています。
-
トラムセットを1か月分(30日)もらったら、薬代はいくらぐらい?
-
1日4錠の処方を30日続けた場合、120錠が必要です。
1錠あたりの薬価:
- 先発品(トラムセット):26.9円
- ジェネリック(トアラセット):7.2円
自己負担額(3割負担)での目安:
品名 30日分の薬価 自己負担額(3割) トラムセット(先発) 約3,228円 約970円 トアラセット(後発) 約864円 約260円 ※薬局での調剤料などを含めると、実際の支払いはやや上がります。
-
トラムセットは飲んですぐ効く?どれくらい効果が続くの?
-
効果の出始め:およそ30分以内
持続時間:約4〜6時間
トラマドールとアセトアミノフェンはそれぞれ作用時間が異なりますが、併用により持続的な鎮痛効果が得られやすい設計です。
-
妊娠中にトラムセットは飲んでも大丈夫?
-
基本的には妊娠中は避けた方が良い薬です。
- トラマドールは**胎児への影響(けいれん、依存、死産)**が報告されており、動物実験でもリスクが示されています。
- アセトアミノフェンも、妊娠後期では胎児の動脈管収縮が問題になることがあります。
どうしても使用が必要な場合は、医師と相談のうえ慎重に判断されます。
当院ではお出ししません。
-
授乳中でもトラムセットは使える?
-
授乳中は使用を避けるのが基本です。当院ではお出ししません。
- トラマドールは母乳中に移行することが確認されており、赤ちゃんへの影響(眠気、呼吸抑制など)の可能性があります。
- 安全性が確立されていないため、授乳中の服用は医師と相談のうえ、授乳中止を検討することが一般的です。
-
子どもには使えるの?
-
12歳未満の小児には使用不可
18歳未満でも、肥満や無呼吸症候群がある場合は投与禁忌
また、12歳以上の小児に対しても明確な有効性・安全性が示された臨床試験はないため、使用は非常に慎重に判断されます。
-
トラムセットに依存性はあるの?
-
トラマドールは「非麻薬性のオピオイド」とされますが、長期間の使用で依存が生じるリスクはあります。
- 精神的依存・身体的依存のどちらも起こりうる
- **急にやめると退薬症状(不安、吐き気、不眠など)**が出ることも
そのため、自己判断で中止せず、医師の指示で徐々に減らす必要があります。
