痛み止めが効かないときに|トラマドール(ワントラム)はどう使う?
痛み止めが効かないときに|
トラマドール(ワントラム)はどう使う?

関節の痛みで『ワントラム』を使っています。

鎮痛剤で、トラマドールの中でも1日1回タイプのお薬です。
ただし、通常の鎮痛剤で効かない方に使用する薬です。
ワントラムはオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
トラマドール塩酸塩(ワントラム)とは
トラマドール塩酸塩(商品名:ワントラム錠)は、がん疼痛や慢性疼痛(変形性関節症、帯状疱疹後神経痛、腰痛症など)に処方される持続性鎮痛薬です。
- 世界的には1970年代から使用
- 日本では1日1回投与の徐放性製剤として、2015年に承認
- WHO方式がん疼痛治療法では、**「弱オピオイド」**に分類され、非オピオイドで痛みが取れない場合の選択肢として重要
特徴と作用機序
✅ 1日1回で持続効果
「徐放性製剤」のため、成分がゆっくりと放出され、24時間にわたる鎮痛効果が得られます。
✅ 2つの作用メカニズム
- 中枢のμオピオイド受容体に作用
- ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害による相乗効果
✅ 麻薬ではないが注意が必要
- 「劇薬・処方箋医薬品」に該当
- モルヒネなどの麻薬とは異なり非麻薬性
- 依存性は比較的少ないとされますが、長期使用では依存リスクあり
効能・効果
以下のような非オピオイド鎮痛薬で対応が難しい痛みに使用されます:
- がんに伴う疼痛
- 慢性的な疼痛(変形性関節症、帯状疱疹後神経痛、関節リウマチ、線維筋痛症など)
有効性のエビデンス
▶ がん疼痛
国内の第III相試験にて、1日4回投与の即放性製剤と同等の鎮痛効果を確認。
多くの患者で良好な疼痛コントロールが維持されました。
▶ 慢性疼痛
- 変形性関節症や帯状疱疹後神経痛に対する試験で、プラセボと比較して有意な鎮痛効果
- 52週の長期投与でも効果が安定
用法・用量と服用時の注意点
- 通常、成人に1日1回100〜300mgを経口投与
- 最大400mg/日まで
- 毎日同じ時間帯(朝・晩など)に服用
- がん疼痛では、痛みが強い場合に即放性製剤を追加(レスキュー)
服用のポイント
- 錠剤は割らず、砕かず、かまずに服用
- 急な中止で**退薬症候(不安・不眠など)**が出る場合あり → 徐々に減量を
使用できない方(禁忌)
以下に該当する場合は使用できません:
- 12歳未満
- 成分アレルギー(過敏症)のある方
- アルコールや鎮痛剤等による急性中毒状態
- MAO阻害薬を使用中、または中止後14日以内
- ナルメフェンを使用中、または中止後1週間以内
- コントロール不良のてんかん
- 高度な腎障害または肝障害
飲み合わせに注意が必要な薬
トラマドールは神経伝達物質に作用するため、他の薬との相互作用に注意が必要です。
注意すべき併用薬
- 抗うつ薬(SSRI、三環系)
- セロトニン作用薬(リネゾリド、メチレンブルーなど)
- オピオイド鎮痛薬
- 睡眠薬などの中枢神経抑制剤
- カルバマゼピン(代謝酵素を誘導)
- ワルファリンなどの抗凝血薬
- アルコール
**呼吸抑制やセロトニン症候群(発熱・痙攣など)**のリスクあり。
他の薬やサプリを服用中の方は、必ず医師に相談を。
副作用とその対策
よくある副作用
- 便秘、悪心、嘔吐
- 眠気(傾眠)、めまい(浮動性めまい)
- 倦怠感、発疹、そう痒感 など
➡ 多くは軽度〜中等度。下剤や制吐剤を併用すると緩和する場合があります。
重大な副作用(頻度は高くないが注意)
- 呼吸抑制
- 痙攣
- 依存性(身体的・精神的)
- ショック、アナフィラキシー
- 意識消失
異常を感じたら服用を中止し、速やかに受診してください。
まとめ
トラマドール塩酸塩(ワントラム錠)は、非オピオイドで十分な効果が得られない痛みに対して有効な鎮痛薬です。
1日1回で24時間作用する利便性がある一方で、依存性や呼吸抑制のリスクがあるため、必ず医師の指示に従って服用しましょう。
服用中は、副作用対策や薬の相互作用も含め、定期的に主治医と相談することが大切です。
参考文献・出典
医療用医薬品添付文書(PMDA)
インタビューフォーム(日本新薬)
KEGG DRUGデータベース
日本緩和医療学会ガイドライン
よくある質問(Q&A)
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Q&A:他の痛み止めと比べて、ワントラムにはどんな強みがある?
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ワントラム(トラマドール塩酸塩徐放錠)は、1日1回の内服で効果が24時間持続するのが最大の特徴です。
同じ成分を含むトラマールカプセル(1日4回服用)と比べても、鎮痛効果が同等でありながら、服薬回数が少ないため、服薬負担の軽減や生活の質(QOL)の維持に役立ちます。また、オピオイド+セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害の2つの作用により、がん疼痛だけでなく、神経痛などの慢性疼痛にも有効なのが特徴です。
モルヒネなどの強オピオイドと比べると、依存リスクが比較的低い点も安心材料の一つです。
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ワントラムっていつから使われている薬なの?
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ワントラムは2015年に日本で承認・販売開始された薬です。
それ以前にも、同成分を含む即放性製剤(トラマール注・カプセルなど)は1970年代から世界中で使用されており、安全性と有効性に関する実績があります。
徐放錠(ワントラム)はカナダで開発され、欧州では2005年から販売されています。
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ワントラムの薬価はいくら?1か月処方されたらいくらかかる?
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ワントラム錠(100mg)の薬価は1錠あたり68.2円です(2024年時点)。
1日1回1錠(100mg)で30日分処方された場合の費用は以下の通りです:- 薬価合計:68.2円 × 30錠 = 2,046円
- 3割負担:約615円/月
- 1割負担(高齢者など):約205円/月
※診察料・調剤料は含まず。服用量が増えると費用も増えます。ースで297円(3割負担で約90円)**程度が目安です。
診察料・処方料・調剤料などは別途かかります。
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ワントラムは飲んでからどれくらいで効く?どれくらい効果が続く?
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ワントラムは内服後約9〜12時間で血中濃度のピークに達し、約24時間効果が持続します(徐放性製剤)。
そのため、朝に服用すれば1日中安定した鎮痛効果が期待できる一方、即効性はやや弱めです。
痛みが急に強くなる場合は、即放性のトラマドール製剤(トラマールなど)を追加投与することがあります。
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妊娠中にワントラムは使える?赤ちゃんへの影響は?
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妊娠中は、医師が治療上必要と判断した場合のみ使用されます。
ワントラムの成分は胎盤を通過するため、新生児に退薬症候(不安・ふるえなど)が出る可能性があるとされています。また、動物実験では胎児の骨や器官の形成に影響が出た報告もあるため、妊娠中は慎重な判断が必要です。
当院ではお出ししません。
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授乳中にワントラムを飲んでも大丈夫?
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授乳中の使用は、医師と相談のうえ慎重に判断されます。
海外データでは、トラマドールの成分が母乳に移行する量は0.1%程度とされていますが、赤ちゃんに眠気や呼吸抑制が出るリスクがあるため注意が必要です。
当院ではお出ししません。
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子どもにワントラムは使えるの?
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12歳未満の子どもには使用できません(禁忌)。
海外では12歳未満の使用により重篤な呼吸抑制や死亡例が報告されており、日本でも小児への安全性は確立していません。また、てんかんのある子どもや肥満・無呼吸症候群のある小児もリスクが高いため、基本的には小児への使用は避けるべきです。
