いつもの痛み止めが効かない…医師が出す「トラマール」って安全なの?

いつもの痛み止めが効かない…|
医師が出す「トラマール」って安全なの?

関節痛で『トラマールOD』を内服しています。

通常の痛み止めで効果が足りない方に使用する薬です。

便秘等の副作用に注意が必要です。

トラマールはオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

トラマドール塩酸塩(トラマールOD錠25mg)とは

トラマールOD錠25mgは、がん性疼痛や慢性疼痛に使用される非麻薬性のオピオイド鎮痛薬です。
通常の解熱鎮痛剤(NSAIDsなど)では痛みが十分にコントロールできないケースで処方されます。

剤形は**OD錠(口腔内崩壊錠)**で、水なしでも口の中で溶かして服用可能です。
ただし、口腔内で吸収されるわけではないため、唾液や水と一緒に飲み込む必要があります。


トラマールOD錠25mgの特徴

オピオイド作用+モノアミン再取り込み阻害作用

オピオイドとしての鎮痛効果に加えて、
脳内のノルアドレナリン・セロトニンの再取り込みを抑える作用もあります。
これらの複合的な働きにより、より効果的な鎮痛が期待されます。

「非麻薬」分類であること

同じオピオイド系でも、麻薬指定ではありません
依存や呼吸抑制のリスクが比較的低めとされており、
モルヒネのような強オピオイドを使用する前段階で使われることが多いです。

※ただし、依存や副作用のリスクはゼロではないため、慎重な使用が必要です。

軽度〜中等度の痛みに対応

以下のような、一般的な鎮痛剤では効果が不十分なケースに使用されます:

  • がん性疼痛
  • 帯状疱疹後神経痛
  • 変形性関節症などの慢性疼痛

OD錠による服用のしやすさ

水が不要なため、嚥下困難な方や高齢者にも適した剤形です。


効能・効果

トラマールOD錠は、非オピオイド鎮痛剤で十分に効果が得られない場合に用いられます。

対象となる主な疾患は以下の通りです:

  • 疼痛を伴う各種がん
  • 慢性疼痛(変形性関節症・腰痛症・帯状疱疹後神経痛など)

がん疼痛管理では、「WHO方式がん疼痛治療」の第2段階(弱オピオイド)に位置づけられています。


有効性(臨床試験結果より)

がん性疼痛に対する効果

  • 国内第III相試験で、約89.6%の患者が「痛みの改善あり」と評価
  • モルヒネと比べて便秘の副作用が少ないというデータもあります。

慢性疼痛に対する効果

  • 変形性関節症・帯状疱疹後神経痛においても有効性が確認済み。
  • 4週間のプラセボ比較試験で有意差あり。
  • 52週間の長期投与でも鎮痛効果が持続したという報告があります。

用法・用量

  • 通常:1日100〜300mgを4回に分けて服用
  • 上限:1回100mg・1日400mgまで

初回投与

  • 1回25mgから開始し、副作用を見ながら調整します。

投与間隔

  • 4〜6時間おきに定時で服用
  • 生活リズムに応じた調整も可能です。

がん疼痛におけるレスキュー投与

  • 痛みの急な増強時は、**臨時で追加投与(レスキュー)**を行います。

※増量・中止は必ず医師の指示に従ってください。


使用できない方(禁忌)

以下の方には原則として使用できません

  • 12歳未満の小児
  • 本剤の成分に過敏症の既往がある方
  • アルコールや向精神薬の中毒状態の方
  • MAO阻害薬を服用中または中止後14日以内の方
  • ナルメフェンを服用中または中止後1週間以内の方
  • 十分に管理されていないてんかん患者

その他、呼吸抑制・ショック状態の方なども注意が必要です。
必ず医師にご相談ください。


飲み合わせに注意が必要な薬

以下の薬と併用する場合、相互作用に注意が必要です:

  • オピオイド鎮痛薬・中枢神経抑制剤:呼吸抑制や鎮静が強まる
  • SSRI・三環系抗うつ薬:セロトニン症候群の可能性
  • カルバマゼピン:鎮痛効果の減弱
  • ワルファリン:出血リスク増加
  • オンダンセトロン:鎮痛効果を減弱

服用中のお薬がある場合は、医師・薬剤師にご相談ください。


主な副作用

最も多く報告されている副作用は以下の通りです:

  • 消化器系:悪心、嘔吐、便秘
  • 中枢神経系:傾眠、めまい、意識消失
  • 依存性:長期使用により依存や退薬症状のリスクあり
  • 重篤な症状:呼吸抑制、痙攣、アナフィラキシー(まれ)

※副作用予防として、制吐剤・下剤が併用されることがあります。

体調に異変を感じた場合は、自己判断せず医師に相談してください。


まとめ

トラマールOD錠25mgは、非オピオイド鎮痛剤で効果が不十分な方にとって、
がん性疼痛や慢性疼痛をコントロールする有力な選択肢となる薬です。

  • 非麻薬性ながら、しっかりとした鎮痛作用
  • 長期的な使用でも有効性が確認されている
  • 依存や副作用のリスクには注意が必要

痛みのコントロールは、生活の質(QOL)を高めるうえでとても重要です。
痛みが続く、薬が合わないといったお悩みがあれば、ぜひ医師へご相談ください。

参考文献・出典

医薬品インタビューフォーム(日本新薬)

添付文書(PMDA医療用医薬品データベース)

KEGG DRUG(トラマドール塩酸塩 D01355)

国内第III相試験報告(がん性疼痛・慢性疼痛)

日本緩和医療学会のがん疼痛治療ガイドライン など

よくある質問(Q&A)

トラマールは他の痛み止めと何が違う?強みは?

トラマールは「非麻薬性オピオイド鎮痛薬」として、NSAIDs(ロキソニンなど)で効かない痛みにも対応できる薬です。
オピオイド作用に加えて、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを抑える作用もあるため、神経性の痛みにも効果があります。
また、モルヒネなどの強オピオイドに比べて便秘などの副作用が軽く、非麻薬指定なのも大きな特徴です。
がん性疼痛や慢性疼痛に対し、軽度~中等度の段階で使える選択肢として位置づけられています。

トラマールOD錠はいつ発売された薬?

日本でトラマールの経口剤(OD錠)が初めて承認されたのは2010年で、
2014年に口腔内崩壊錠(OD錠)として発売されました。
もともとは注射剤として1978年に日本で承認されており、長い臨床使用歴があります。

トラマールOD錠25mgを30日分もらったら、薬代はいくら?

トラマールOD錠25mgの薬価は17円/錠です。
1日4回(=4錠)服用する場合、30日で120錠 × 17円 = 2,040円となります。

  • 3割負担の自己負担額:約610円前後
  • 後発品(トラマドール塩酸塩OD錠25mg「KO」)なら薬価9.4円/錠で、自己負担は約340円前後

※調剤料・診察料は別途かかります。ります。

トラマールの効果はどれくらいで出る?どれくらい続く?

トラマールは服用後約1〜2時間で効果があらわれ、5〜6時間程度持続します。
そのため、通常は4〜6時間おきに1日4回の定時服用が推奨されています。
突出した痛みがあるときは、**追加投与(レスキュー)**も可能です。

妊娠中にトラマールを使っても大丈夫?

基本的には避けるべき薬です。
胎盤を通過するため、胎児に影響(退薬症候など)が出る可能性があります。
ただし、痛みが強く他に有効な薬がない場合、医師が必要と判断すれば使用されることもあります
使用する際は、妊娠週数や症状を踏まえて慎重な判断が必要です。

当院ではお出ししません。

授乳中にトラマールを使ってもいい?

使用は原則として慎重に判断されます。
海外の報告では、微量(0.1%)が母乳に移行することが確認されています。
必要に応じて使用する場合は、授乳タイミングを調整したり、一時的に授乳を中止するなどの対処が必要です。
必ず医師に相談しましょう。

当院ではお出ししません。

子どもにトラマールは使える?

12歳未満の小児には使用禁止(禁忌)です。
特に、海外では呼吸抑制による死亡例
が報告されています。
また、12歳以上であっても、有効性・安全性が十分に確認されていないため慎重に使用する必要があります。