アスピリンは川崎病の薬?他の疾患には使うの?
アスピリンは川崎病の薬?
他の疾患には使うの?

子供が川崎病で『アスピリン』を処方されました。

古いお薬で、NSAIDという種類の鎮痛剤ですね。今は川崎病のお子さんには使用されますが、通常の痛み止めとしてはあまり使いません。
アスピリンは当院ででほぼ処方いたしません。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
アスピリンとは
アスピリンは「解熱・鎮痛・抗炎症薬(NSAID)」として知られる薬で、1850年代に合成され、1890年代から臨床で使用されています。
名前の由来は、サリチル酸を含む植物「Spiraea ulmaria(シモツケ)」のラテン語表記(acidum spiricum)に由来します。
アスピリンの特徴
- 熱・痛み・炎症を抑える作用
解熱・鎮痛・抗炎症の3つの効果を持ち、風邪や頭痛、生理痛など幅広い用途で使用。 - 血小板の凝集を抑える
特に川崎病では、血栓予防のための低用量使用が行われます。 - NSAIDの一種
「ピリン」という名前がつきますが、ピリン系解熱薬ではなく、サリチル酸系に分類されます。
効能・効果
① 各種の痛みや炎症に
- 関節リウマチ、変形性関節症
- 術後の痛み、頭痛、歯痛、月経痛、筋肉痛、腰痛、捻挫・打撲痛など
② 風邪に伴う発熱やのどの痛みに
- 急性上気道炎(気管支炎含む)による解熱・鎮痛
③ 川崎病(心血管後遺症を含む)
- 急性期は高用量で炎症を抑え、回復期は血栓予防目的で低用量を使用
有効性(作用機序)
解熱・鎮痛・抗炎症作用のしくみ
- 視床下部の体温調節中枢に作用して熱放散を促進
- プロスタグランジン合成を阻害し、痛みや炎症を抑える
血小板凝集抑制(川崎病)
- COX-1を不可逆的に阻害し、トロンボキサンA2の生成を抑制
- 血栓を防ぐ作用があります(主に低用量投与時)
用法・用量
痛み・炎症の場合(成人)
- 1回 0.5〜1.5g、1日 1.0〜4.5g
- 年齢・症状により増減(最大4.5gまで)
急性上気道炎の解熱・鎮痛(成人)
- 1回 0.5〜1.5g を頓用
- 原則1日2回まで、最大4.5g/日
※ 空腹時の服用は避ける
川崎病
- 急性期:体重1kgあたり30〜50mg/日(3回分)
- 回復期:体重1kgあたり3〜5mg/日(1回)
使用できない方(禁忌)
以下の方は使用できません:
- アスピリンやサリチル酸系製剤で過敏症の既往がある
- 消化性潰瘍のある方
- アスピリン喘息のある方、またはその既往歴
- 出産予定日12週以内の妊婦
- 重篤な肝・腎・心機能障害のある方(川崎病以外の場合)
- 出血傾向がある方(川崎病時)
飲み合わせに注意が必要な薬
アスピリンは多くの薬剤と相互作用があります。以下は主なものです:
出血リスクが増す薬
- 抗凝固剤(ワルファリン、ヘパリン など)
- 血小板凝集抑制薬(クロピドグレル など)
- 血栓溶解剤(t-PA 等)
作用を増強・減弱させる薬
- 糖尿病薬(低血糖のリスク増)
- メトトレキサート(副作用増強)
- NSAIDs、降圧薬、利尿剤(作用減弱または副作用増)
その他注意すべき併用
- SSRI(出血リスク増)
- リチウム、抗てんかん薬、アルコール など
副作用と発生頻度
重大な副作用(頻度不明)
- アナフィラキシー、出血、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、TEN
- 消化性潰瘍、肝機能障害、喘息発作の誘発
- 再生不良性貧血、白血球・血小板減少
その他の副作用(頻度不明)
- 消化器症状:胃痛、悪心、下痢、胸やけ
- 過敏症状:発疹、蕁麻疹
- 神経系:頭痛、めまい、耳鳴り、難聴
- 肝・腎・血液異常、倦怠感、低血糖 など
まとめ
アスピリンは、100年以上使われ続けている信頼性の高い薬です。
熱・痛み・炎症を抑える基本薬として活躍する一方、川崎病や血栓予防にも使われます。
ただし、消化性潰瘍や出血リスク、副作用が出やすい方には注意が必要です。
小児や妊婦、高齢者では特に慎重な対応が求められます。
服用にあたっては必ず医師や薬剤師と相談の上、自己判断での継続・中断を避けることが重要です。いため、使用開始後は体調の変化をよく観察し、医師と相談しながら使用を続けることが大切です。
参考文献・出典
PMDA医薬品添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
KEGG DRUGデータベース(D00109)
https://www.genome.jp/kegg/drug/D00109
川崎病の治療に関する日本小児循環器学会ガイドライン
厚生労働省「薬と健康の情報」ページ
よくある質問(Q&A)
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アスピリンって、他の解熱鎮痛薬と比べて何が優れてるの?
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アスピリンは、解熱・鎮痛・抗炎症で、特に川崎病や心臓・血管系の病気で使われる理由になっています。
また、COX-1を不可逆的に阻害する点も独特で、血小板の機能を長く抑えるため、少量でも血栓予防に使えるのが強みです。
ただし、胃腸障害など副作用も出やすいので、医師の指示に従うことが重要です。
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アスピリンっていつから使われている薬なの?
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アスピリンは1899年にドイツで製品化され、世界で最も歴史のある医薬品のひとつです。
日本でも古くから使われており、今なお医療現場で現役の薬です。
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アスピリンって、1か月分もらったらいくらくらいかかる?
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例えば、アスピリン腸溶錠100mg「トーワ」(後発品)の場合、薬価は5.9円/錠です。
1日1錠を30日分処方されたとすると、- 薬価合計:5.9円 × 30錠 = 177円
- 3割負担の自己負担額:約53円+調剤料等
実際の支払額は200〜400円程度になるケースが多いですが、用量や薬局によって変わります。
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妊娠中にアスピリンを飲んでも大丈夫?
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出産予定日12週以内の妊婦さんは使用NGです。
胎児へのリスク(動脈管早期閉鎖や出産時出血)があるため、使用してはいけません(禁忌)。● 妊娠中期〜前期では、医師が必要と判断した場合に限り慎重に使用されます。
長期投与による胎児や母体への影響(出血、羊水減少、腎機能障害など)が報告されています。✅ 妊娠中は必ず医師に相談し、自己判断での使用は避けましょう。
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授乳中にアスピリンを飲んでもいいの?
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アスピリンは母乳に移行することが知られており、授乳中の使用は避けた方がよいとされています。
- 少量ならば影響が少ないとされるケースもありますが、
- 長期投与や高用量投与では、赤ちゃんに出血傾向やアレルギー症状を引き起こす可能性があります。
✅ 授乳中にどうしても服用が必要な場合は、医師と相談のうえ、授乳の一時中止や時間調整が検討されます。
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子どもにアスピリンを飲ませてもいいの?
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15歳未満の子どもには基本的にアスピリンを使いません。
特にインフルエンザや水ぼうそうのときには、アスピリンを使用すると**ライ症候群(脳と肝臓の重い病気)**を引き起こすおそれがあるため、原則使用禁止です。ただし、川崎病など特別なケースでは使用されることがありますが、その場合も医師の管理のもとで慎重に投与されます。
