リンゼスって効く?便秘型過敏性腸症候群の治療に使われる薬の話

リンゼスって効く?
便秘型過敏性腸症候群の治療に使われる薬の話

便秘で『リンゼス』を処方されました。

ストレスがあったり、過敏性腸症候群の便秘の方に使用する薬ですね。

安全性も高く、長期使用も可能です。

リンゼスはオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

リナクロチド(リンゼス®)とは

リナクロチド(商品名:リンゼス®)は、
**便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)**および
**慢性便秘症(器質的疾患によらないもの)**に使用される内服薬です。

腸内にあるグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体を刺激し、

  • 腸液の分泌を促す
  • 腸の動きを助ける
  • 腸の痛み(痛覚過敏)を抑える

といった作用が確認されています。


リナクロチドの特徴

✅ 全身にはほとんど吸収されない

→ 血液中には出にくく、全身的な副作用のリスクが少ないのが特徴です。

✅ 効果の早さと持続性

→ 服用後24時間以内に排便がみられる例も多く、効果は長期間安定して持続します。

✅ IBS-Cや慢性便秘症に特化

→ 下痢型IBSや、腸閉塞のような器質的な異常がある便秘には使用できません。


効能・効果

  • 便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)
  • 慢性便秘症(器質的疾患によるものを除く)

※治療の基本はまず「生活・食事指導」。それで改善が見られない場合に、リナクロチドが検討されます。


有効性(臨床試験より)

■ IBS-Cに対する効果(第III相試験)

  • 腹部症状の改善(腹痛・不快感):29.3%(プラセボ15.5%)
  • 排便の質(完全自然排便)の改善:34.9%(プラセボ19.1%)
  • 投与24時間以内に排便があった割合:SBM 72.3%、CSBM 24.9%

■ 慢性便秘症に対する効果

  • 排便回数(1週目の自然排便数):4.02回(プラセボ1.48回)
  • 完全自然排便のレスポンダー率:56.0%(プラセボ27.3%)
  • 腹部症状の改善:24.4~36.0%(プラセボ3.4~11.6%)

■ 長期使用でも効果が持続

  • IBS-Cでは52週、慢性便秘症では56週にわたって効果が維持されました。

用法・用量

  • 通常:0.5mgを1日1回、食前に服用
  • 症状に応じて:0.25mgに減量することもあり

※定期的に効果や副作用を評価しながら継続可否を判断します。


使用できない方(禁忌)

以下の方には使えません:

  • 腸閉塞またはその疑いがある方
  • リナクロチドに対して過敏症の既往がある方

飲み合わせに注意が必要な薬

リナクロチドは血中にほとんど出ないため、薬物相互作用のリスクは少なめです。

ただし以下の併用には注意が必要です:

  • 他の下剤(例:酸化マグネシウム、センノシド)
    → 下痢が悪化する可能性があります
  • 下痢を誘発しやすい薬剤全般

副作用と発生頻度

主な副作用

項目発生率(目安)
下痢13.0%(IBS-C)、9.2%(慢性便秘症)
腹痛・腹部不快感・膨満感まれにあり
悪心・軟便・放屁・便意切迫感一部で報告

その他の副作用

  • 肝機能異常、頭痛、発疹、口渇 など
  • 重度の下痢(頻度不明)には注意が必要です

まとめ

  • リナクロチド(リンゼス®)は、便秘に特化した薬で、特にIBS-Cや慢性便秘症に効果があります。
  • 腸の動きや痛みを改善し、排便の回数や質を向上させる作用が期待されます。
  • 主な副作用は下痢。重度の症状が出た場合は、すぐに医師に相談を。

※服用前には医師とよく相談し、体質や他の薬との相性も確認しましょう。

参考文献・出典

PMDA添付文書
 医薬品医療機器総合機構(PMDA)公式サイト
 → 「リンゼス」で検索すると添付文書やインタビューフォームが見つかります。

KEGG医薬品データベース
 → 一般名「リナクロチド(Linaclotide)」で検索可能。

よくある質問(Q&A)

リナクロチド(リンゼス®)は、他の便秘薬と比べてどんな強みがあるの?

リナクロチドは、「グアニル酸シクラーゼC受容体作動薬」という新しいタイプの薬で、腸の中で直接作用して便を出しやすくする点が特徴です。

他の便秘薬(例えば酸化マグネシウムや刺激性下剤など)と違い、

  • 吸収されず腸内だけで作用するため、全身への影響が少ない
  • 腸の痛み(腹痛・不快感)をやわらげる効果もある
  • 耐性や習慣性がほぼ報告されていない
  • IBS-C(便秘型過敏性腸症候群)にも適応がある

といった点が強みです。
特に「便秘+お腹の不快感」がある方には向いている薬です。

リナクロチド(リンゼス®)って、いつからある薬なの?

日本でリナクロチドが初めて承認されたのは2016年12月です(IBS-Cへの適応)。
その後、2018年8月に慢性便秘症への効能も追加されました。

もともとは米国のIronwood社が開発し、アステラス製薬が日本で販売しています。

1か月(30日)処方されたら、薬代はいくらぐらいかかるの?

リナクロチドの薬価は以下のとおりです:

  • リンゼス錠0.25mg:1錠あたり64.5円

通常は1日1回0.5mg服用(0.25mgを2錠)なので、1か月(30日)では

  • 64.5円 × 2錠 × 30日 = 3,870円(薬価ベース)

保険適用後の自己負担額は以下の通りです:

自己負担割合1か月の目安負担額
3割負担約1,160円
1割負担約390円

※別途、調剤料・診察料が加算されます。

妊娠中でもリナクロチドって飲めるの?赤ちゃんへの影響は?

原則として妊娠中の使用は推奨されません。

動物実験(マウス)では、胎児体重の減少や形態異常などの報告があります。
そのため、妊娠している可能性がある場合や、妊婦には「治療上の有益性がリスクを上回る」と判断された場合のみ使用します。

服用前に、必ず医師に妊娠の可能性を伝えましょう。

授乳中でもリナクロチドは飲めるの?母乳への影響はある?

リナクロチドは体内にほとんど吸収されず、血中にもほとんど移行しないため、母乳中に成分が移行する可能性は低いと考えられています。
ただし、安全性が完全に確認されているわけではないため、当院では処方いたしません。

子どもにもリナクロチドって使えるの?

原則として子どもには使用できません。

リナクロチドは、小児に対する有効性・安全性の臨床試験が行われておらず、特に2歳未満の乳幼児では危険とされています。

理由としては、乳幼児ではGC-C受容体が大人より多く発現しており、薬の影響で重度の下痢や脱水になるリスクがあるからです。