過敏性腸症候群|下痢とお腹の痛みで悩んでいる方へ|イリボーの効果と使い方

過敏性腸症候群|
下痢とお腹の痛みで悩んでいる方へ|
イリボーの効果と使い方

過敏性腸症候群で『イリボー』を処方されました。

下痢型の過敏性腸症候群でストレスが多い方へのお薬ですね。

近年発売され精度の高い研究が多く、よく使われるお薬です。

イリボーは当院で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

イリボー®(ラモセトロン塩酸塩)とは

イリボーは、**下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)**の治療に使われる処方薬です。
主成分のラモセトロン塩酸塩は、セロトニン5-HT₃受容体拮抗薬に分類され、消化管の過敏な動きや痛みを抑えることで症状を改善します。

従来は男性のみの適応でしたが、追加試験で女性への有効性・安全性も認められ、現在は男女ともに使用可能です。


イリボーの特徴

✅ セロトニン5-HT₃受容体への選択的な作用

ストレスなどで生じる腸の過剰な活動や痛覚過敏を抑制します。

✅ 1日1回の服用で効果

持続的に作用するため、毎日1回の服用で十分な効果が期待されます。

✅ 水なしで服用できる「OD錠」あり

口腔内で崩壊するタイプ(OD錠)もあり、水がなくても服用可能。

✅ 長期使用にも対応

臨床試験で長期にわたり効果が持続することが確認されています。
※ただし3か月を目処に継続の可否を判断します。


効能・効果

  • **下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)**に適応
  • 食事や生活指導で改善が得られない場合に使用します。

※診断基準(RomeⅢなど)に基づき、下痢が主体であることが明確な場合に処方されます。


有効性(臨床試験より)

▶ 男性:第III相試験結果

  • 月間レスポンダー率(最終時点)
    • プラセボ:24.2%
    • イリボー5µg:46.9%(p<0.001)
  • 投与1週目の効果(週間レスポンダー率)
    • プラセボ:11.1%
    • イリボー5µg:20.8%(p<0.01)

▶ 女性:第III相試験結果

  • 月間レスポンダー率(最終時点)
    • プラセボ:32.0%
    • イリボー2.5µg:50.7%(p<0.001)
  • 投与2週目の効果(週間レスポンダー率)
    • プラセボ:14.1%
    • イリボー2.5µg:26.4%(p<0.001)

用法・用量

男性の場合

  • 通常:1日1回5µg(朝食前)
  • 最大10µg/日まで調整可能

女性の場合

  • 通常:1日1回2.5µg(朝食前)
  • 効果が不十分な場合は最大5µgまで増量可

投与にあたっての注意

  • 用量調整は1か月程度の症状推移を確認してから行います。
  • 改善がみられた場合は、3か月を目安に継続または終了を判断します。

使用できない方(禁忌)

  • 本剤成分(ラモセトロン塩酸塩)に対して過敏症の既往がある方

飲み合わせに注意が必要な薬

● 血中濃度上昇のリスク

  • フルボキサミン(CYP1A2阻害作用あり)

● 便秘・硬便を増強するおそれ

  • 抗コリン作用のある薬剤(三環系抗うつ薬、抗コリン剤など)
  • 止しゃ剤やアヘン系薬剤(ロペラミド、アヘンチンキなど)

※これらを併用中の方は、必ず医師または薬剤師に相談してください。


副作用と発生頻度

▶ よくある副作用

副作用名男性女性
便秘5.0%14.3%
硬便5.4%22.0%

※女性は副作用の頻度が高く出やすいため注意が必要です。


▶ その他の副作用(頻度不明を含む)

  • 【消化器】腹部膨満、腹痛、悪心、胃不快感、血便など
  • 【全身症状】口渇、倦怠感
  • 【皮膚】発疹、蕁麻疹
  • 【神経系】頭痛、傾眠
  • 【肝機能】AST/ALT/γ-GTP上昇など

▶ 重篤な副作用(頻度不明)

  • 虚血性大腸炎:腹痛・血便があれば即受診
  • 重篤な便秘:腸閉塞などの報告あり(類薬で死亡例あり)
  • アナフィラキシー、ショック:過去に注射剤で報告あり

まとめ

  • イリボーは下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)に有効な治療薬で、1日1回の服用で腹痛や下痢を改善します。
  • 男女で開始用量が異なるため、医師の指示のもとで使用してください。
  • 副作用として便秘や硬便が多く、特に女性は注意が必要です。
  • 他の薬との相互作用にも気をつける必要があります。
  • 効果が得られても、漫然とした継続は避け、3か月を目安に評価を行いましょう。

参考文献・出典

PMDA 医薬品医療機器総合機構 添付文書検索

厚生労働省「診療ガイドライン」
└ 過敏性腸症候群の診断・治療指針が含まれています。

日本消化器病学会・日本消化器心身医学会のガイドライン

医薬品インタビューフォーム(アステラス製薬)

よくある質問(Q&A)

他の下痢止めと何が違うの?イリボーの強みは?

イリボー(ラモセトロン塩酸塩)は、セロトニン5-HT₃受容体を選択的にブロックすることで、ストレスや過敏な腸の反応を抑えてくれる薬です。
市販薬や他の止しゃ剤(ロペラミドなど)とは違い、「一時的に止める」のではなく、腸の異常な動きや知覚過敏そのものを改善します。

そのため、お腹がゆるくなるのを繰り返す人や、慢性的な下痢型IBSに対して、原因にアプローチできる薬として評価されています。

また、1日1回の服用でOK水なしでも飲めるOD錠(口腔内崩壊錠)もあるのが便利です。

イリボーっていつから使われてる薬?

イリボーは、2008年7月に男性向けに国内で承認された薬です。
その後、追加の臨床試験で女性にも有効性が確認され、2015年5月に女性への適応も承認されました。

1か月飲むといくら?薬価と自己負担の目安は?

イリボーの薬価(2021年改訂時点)は以下の通りです。

製品名価格(1錠あたり)30日分の薬価自己負担(3割負担の目安)
イリボーOD錠2.5μg37.3円約1,119円約336円
イリボーOD錠5μg61円約1,830円約549円

※自己負担額は保険適用(3割負担)の目安であり、処方料・調剤料などは別途かかります。

イリボーは妊娠中に飲んでも大丈夫?

基本的には妊娠中の使用は慎重に判断されます。
動物実験では異常は報告されていないものの、ヒトでの安全性は確立されていません。

そのため、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用」とされています。
当院ではお出ししません。

授乳中に飲んでもいいの?母乳への影響は?

授乳中の使用についても、ラットの実験で乳汁への移行が確認されています

当院ではお出ししません。

子どもにもこの薬は使えるんですか?

イリボーは小児(子ども)への使用は推奨されていません。
子どもを対象とした十分な有効性や安全性のデータがないためです。