トリメブチンマレイン酸塩の効果と副作用をわかりやすく解説

トリメブチンマレイン酸塩の効果と
副作用をわかりやすく解説

過敏性腸症候群で『トリメブチンマレイン酸塩』を処方されました。

下痢にも便秘にも使われるお薬ですね。

トリメブチンマレイン酸塩は当院で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

トリメブチンマレイン酸塩とは

トリメブチンマレイン酸塩は、消化管(胃や腸)の運動機能を正常化する「消化管運動調律剤」です。
1970年にフランスのJouveinal社が開発し、日本では「セレキノン®」などの先発品や、多くの後発品として流通しています。

主な対象疾患

  • 慢性胃炎にともなう腹部膨満感・腹痛・悪心(吐き気)・噯気(げっぷ)
  • **過敏性腸症候群(IBS)**における下痢・便秘・残便感 など

トリメブチンマレイン酸塩の特徴

1. 消化管平滑筋への“直接作用”

神経系を介さずに、胃や腸の平滑筋に直接働きます。
運動が低下している場合は促進し、亢進している場合は抑制するという「二面的作用」が特徴です。

2. 消化管運動を整える効果

  • 胃排出能の改善により、食べ物の移動をスムーズにします
  • 大腸の運動も正常化し、便通異常を軽減します

3. 多様な症状への対応

慢性胃炎や過敏性腸症候群による以下のような不快症状を改善します:

  • 腹痛
  • 腹部膨満感
  • 下痢・便秘
  • 食欲不振 など

効能・効果

医薬品添付文書で認められている効能・効果は以下の通りです。

● 慢性胃炎による消化器症状

  • 腹部膨満感
  • 腹部疼痛
  • 悪心(吐き気)
  • 噯気(げっぷ)

● 過敏性腸症候群(IBS)

  • 下痢型、便秘型、混合型すべてに適応

有効性(有効性試験など)

フランスでの開発経緯

1970年、アミノエステル誘導体の研究から開発されました。

日本国内の承認と展開

  • 日本では「セレキノン®」として承認・発売
  • 多くの後発医薬品も登場しており、先発品と生物学的に同等であることが確認されています

用法・用量

症状や年齢、体調によって調整されますが、基本的な服用量は以下の通りです。

● 慢性胃炎による消化器症状

  • 1日300mg(100mg錠×3回)

● 過敏性腸症候群(IBS)

  • 1日300~600mg(100mg錠×3~6回)

※1日3回に分けて服用
※高齢者は減量などの配慮が必要です


使用できない方(禁忌)

添付文書上の絶対的禁忌は明記されていませんが、以下に該当する方は注意が必要です。

  • 過去にトリメブチンマレイン酸塩でアレルギーを起こしたことがある方
  • 妊娠中・授乳中・小児・高齢者など:慎重な判断と医師の指導が必要

飲み合わせに注意が必要な薬

明確な相互作用は記載されていませんが、以下に該当する薬を使用している方は、事前に医師・薬剤師へ相談を。

  • 他の消化管運動改善薬
  • 中枢神経系作用薬(眠気やめまいを起こす薬)
  • 肝機能に影響を与える薬

副作用と発生頻度

主な副作用(頻度:0.1%未満〜1%程度)

  • 便秘
  • 下痢
  • 口渇(口の渇き)
  • 悪心、嘔吐
  • 腹鳴、口内のしびれ感
  • 眠気、めまい、倦怠感、頭痛
  • 発疹、じんましん、かゆみ
  • 排尿障害、尿閉

治験では**1,515例中74例(4.88%)**に副作用が報告されており、最も多かったのは便秘(1.32%)です。

重大な副作用(頻度:0.1%未満または不明)

  • 肝機能障害
  • 黄疸

AST、ALT、ALPなどの肝酵素上昇をともなう肝機能異常があらわれることがあります。
「体がだるい」「皮膚や白目が黄色い」などの症状があれば、すぐに医師へ相談してください。


まとめ

トリメブチンマレイン酸塩は、胃腸の運動を“整える”薬です。
腹部の不快感や便通異常など、日常生活の質を下げる症状の改善が期待できます。

ただし、ごくまれに重い副作用が出る可能性もあるため、服薬中の体調変化には注意が必要です。
自己判断で服用せず、必ず医師や薬剤師の指示に従いましょう。薬剤師に相談し、用法・用量を守って服用しましょう。


参考文献・出典

医薬品添付文書(セレキノン錠・後発品各種)

KEGG DRUGデータベース

製薬企業公開情報・インタビューフォームなど

よくある質問(Q&A)

他の似た薬と比べて、トリメブチンマレイン酸塩の強みは何ですか?

トリメブチンマレイン酸塩の最大の特徴は、消化管の動きを“整える”二面的作用です。
胃や腸の動きが弱っていれば促進し、過剰に動いていれば抑えることで、下痢と便秘の両方に対応できます。

神経系を介さず、消化管の平滑筋に直接作用するのもポイントで、他の薬(例えばドンペリドンなどの制吐薬)とは異なる作用機序を持ちます。

トリメブチンマレイン酸塩の先発薬っていつ発売されたの?

日本国内では、1972年に「セレキノン錠」として初めて登場しました。
その後、2007年に販売名の変更があり、「セレキノン錠100mg」として再承認・再収載されています。
後発医薬品は1990年代〜2000年代にかけて順次発売されています。

現在は先発薬は販売中止となっています。

トリメブチンマレイン酸塩って、1か月分でいくらかかるの?

もっとも使われている後発品(例:トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「サワイ」など)の薬価は、1錠あたり6.1円です。

▷ 目安の自己負担額(30日分の場合)

処方内容総薬価自己負担(3割)
1日3錠 × 30日約549円約165円
1日6錠 × 30日約1,098円約330円

※調剤料などを含まない薬代のみの計算です。

妊娠中でもトリメブチンマレイン酸塩は使えますか?

妊娠中の使用については安全性が確立されていません

動物実験では重大な胎児への影響は報告されていないものの、ヒトでの十分なデータはありません

ポリフルは消化管から吸収されにくい薬のため、全身への影響は少ないとされていますが、妊娠中の服用経験が十分とはいえません。

妊娠中に便秘・下痢で悩んでいる方は、必ず医師に相談した上で処方を受けましょう。

授乳中に飲んでも大丈夫?母乳への影響は?

授乳中の使用は慎重に検討すべきとされています。

動物実験では、投与後に母乳中へ微量の移行が確認されています。

当院では使用しません

子どもにもこの薬は使えるんですか?

当院では使用しません。

日本では、小児に対する臨床試験は行われていません

添付文書でも「小児等への安全性は確立していない」と記載されています。