下痢が止まらないときに…ロペミンはどんな薬?使い方や注意点を解説
下痢が止まらないときに…
ロペミンはどんな薬?使い方や注意点を解説

下痢になり『ロペラミド塩酸塩』を処方されました。

下痢症に使われる腸内の水分を減らすお薬ですね。
ロペミンは当院で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
ロペラミド塩酸塩(ロペミン®)とは
ロペラミド塩酸塩(商品名:ロペミン®)は、「下痢症」の治療に使われる止瀉剤です。
1969年にベルギーのJanssen社が開発し、1973年にベルギーで発売されました。日本では1981年より医療現場で使用されています。
止瀉剤の中でも比較的新しいタイプ
従来の整腸剤や腸内殺菌剤などに比べ、腸管に作用しつつ中枢神経への影響が少ないのが特徴です。
ロペラミド塩酸塩(ロペミン®)の特徴
特徴①:腸の動きと水分バランスを整える
- 腸内の水分分泌と吸収の異常
- 腸の運動異常
この2つを是正することで、症状の根本にアプローチする止瀉作用を発揮します。
特徴②:中枢への影響が少ない
- モルヒネやコデインなどと異なり、依存性や強い中枢抑制作用がほとんどありません
特徴③:複数の剤型あり
- カプセル(1mg)
- 細粒(0.1%)
- 小児用細粒(0.05%)
年齢や病状に応じて選択できます。
効能・効果
- 下痢症(急性・慢性どちらにも対応)
- 小児用細粒は、小児の急性下痢症に限定されます
有効性:臨床試験からわかっていること
1,288例の国内臨床試験による改善率:
- 全体:76%
- 急性下痢症:89%(440/492例)
- 慢性下痢症:68%(501/733例)
→ 急性の下痢に対しては特に有効です。
用法・用量
成人の場合
- 通常、1日1~2mgを1~2回に分けて服用
- 症状に応じて調整することもあります
小児の場合(医師の指導が必要)
- 小児用細粒(0.05%)が使用されます
- 6か月未満の乳児には使用不可
注意点
- 脱水などひどい状態の時に使用します。基本はウイルスを体の外に出すことで腸炎は治ります。
- 脱水がある場合は、水分・電解質の補給を必ず行う
- 便秘が出た場合はすぐに服薬を中止する
- めまいや眠気が出ることがあるため、車の運転や危険作業は控える
使用できない方(禁忌)
以下の方には使用できません:
- 出血性大腸炎(O157など)
- 偽膜性大腸炎(抗生物質によるもの)
- 低出生体重児・新生児・6か月未満の乳児
- 本剤成分にアレルギーのある方
また、感染性下痢、潰瘍性大腸炎、肛門疾患がある方は原則として慎重な判断が必要です。
飲み合わせに注意が必要な薬
吸着剤との併用
- ケイ酸アルミニウム、タンニン酸アルブミン
- 効果が弱くなる可能性 → 服用間隔をあける工夫が必要
血中濃度が上昇する併用薬
- リトナビル
- キニジン
- イトラコナゾール
- これらはロペラミドの代謝・排出を妨げるため、副作用リスクが高まります
吸収が変化する薬
- デスモプレシン(経口)
- ロペミン®が腸の動きを抑えることで吸収が増加 → 注意が必要
副作用と発生頻度
重篤な副作用(頻度はごくまれ)
- イレウス(腸閉塞)、巨大結腸
- ショック、アナフィラキシー
- TEN・Stevens-Johnson症候群(重い皮膚症状)
→ 異常を感じた場合はすぐに医師へ
その他の副作用(頻度あり)
- 腹部膨満、悪心、発疹、眠気、AST/ALT上昇 など
- 副作用の出方には個人差があります
まとめ
特徴 | 内容 |
---|---|
対象 | 急性・慢性の下痢症、小児の急性下痢症(小児用) |
効果 | 腸の水分バランス・動きを整えることで止瀉作用 |
有効性 | 急性下痢での改善率は89%と高水準 |
注意点 | 感染性下痢・重い基礎疾患がある方は使用に注意 |
副作用 | イレウスや皮膚症状など重篤なものもまれに報告あり |
参考文献・出典
- PMDA医薬品医療機器総合機構|ロペミン添付文書https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400140_2319001M1213_1_01
- KEGG DRUG:ロペラミド塩酸塩(D00729)https://www.kegg.jp/entry/dr:D00729
- 日本化学療法学会誌(旧薬理と治療)などの学術論文※「ロペラミド」「止瀉薬」で検索
よくある質問(Q&A)
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ロペミンは他の下痢止めと何が違う?どんな強みがあるの?
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ロペミン(有効成分:ロペラミド塩酸塩)は、腸の運動を抑えて水分の吸収を高める作用により、急性・慢性の下痢に有効です。
モルヒネやコデインのように中枢神経に強く作用せず、依存性が少ないことが特長です。整腸剤(ビオフェルミンなど)は腸内環境を整える作用で、即効性は乏しいことがありますが、ロペミンは比較的早く下痢を抑える効果が期待されます。
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ロペミン(ロペラミド塩酸塩)はいつ発売された薬?
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ロペラミド塩酸塩は1969年にベルギーで開発され、1973年に発売されました。
日本では、1981年にロペミン®カプセル、1986年に細粒剤が登場しました。
小児用細粒(0.05%)は1988年に承認されています。
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ロペミンを1か月分もらうといくら?薬価と自己負担額の目安は?
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2023年時点での薬価は以下のとおりです(先発品):
製剤名 薬価(1単位あたり) 30日分の薬価目安(1日2カプセルの場合) 自己負担(3割負担) ロペミン®カプセル1mg 9.8円/カプセル 588円(9.8円 × 2錠 × 30日) 約180円 ロペミン®細粒0.1% 13.8円/g 処方量による(例:1g/日で414円) 約125円 小児用細粒0.05% 14.3円/g 処方量による(例:0.5g/日で214円) 約65円 ※感染性腸炎の場合は5日分等の処方となります。
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妊娠中でもロペミンは飲んでいいの?
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原則として、妊娠中の使用は慎重に行う必要があります。
動物試験などでは明確な催奇形性は示されていませんが、ヒトでの安全性データが不十分なため、「治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用可」とされています。不安なときは、自己判断で服用せず、医師に相談してください。
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授乳中にロペミンを使っても大丈夫?
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ロペラミド塩酸塩は、母乳中へ移行する可能性があると報告されています。
そのため、服用中は授乳を避けることが推奨されています。
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子どもにもロペミンは使える?
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使用可能ですが、年齢と用量に注意が必要です。
- 使用できる年齢:生後6か月以上
- 推奨製剤:小児用細粒0.05%
- 6か月未満の乳児には禁忌
⇒ 海外では過量投与により、呼吸抑制や中枢障害、腸壊死による死亡例も報告されています。
小児に使用する際は、必ず小児科や医師の指導のもと服用してください。
