「悪玉コレステロールが下がらない方へ|注射で下げる薬『レパーサ』とは?
「悪玉コレステロールが下がらない方へ|
注射で下げる薬『レパーサ』とは?

脂質異常症のお薬で『レパーサ』を使いたいのですが。

2週間に一度皮下に注射する薬ですね。
当院では処方できず、専門病院へのご紹介となります。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
レパーサとは?
- 一般名:エボロクマブ(遺伝子組換え)
- 薬効分類名:ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤
特徴
レパーサは「PCSK9」と呼ばれるタンパク質を阻害し、肝臓のLDL受容体を増やして血中のLDLコレステロール(いわゆる“悪玉コレステロール”)を低下させる注射薬です。
既存のスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)で効果不十分な場合やスタチンが使えない場合、さらに心血管リスクが高い方など、“特別な事情”で検討されることがあります。
レパーサが使われる主な患者さん
レパーサは、以下のような状況で保険適用となります。
1. 家族性高コレステロール血症
- ヘテロ接合体およびホモ接合体(遺伝性にLDLが高い方)
2. 高コレステロール血症
- 心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中など)の発現リスクが高い
- スタチンで効果が不十分、またはスタチンが使用できない
なぜ「特別」なのか?
- 通常の治療が効かない、または使えない方のための薬
- 心臓・血管の病気リスクが非常に高い方が対象
レパーサの使用方法
投与法と頻度
- 140mg製剤:2週間に1回 皮下注
- 420mg製剤:4週間に1回 皮下注
自己注射について
- 医師や医療スタッフによる教育が必要
- 投与タイミングや保管方法(冷蔵・凍結不可)などの指導が重要
薬価(2024年時点の目安)
製剤 | 規格 | 薬価(税別) |
---|---|---|
レパーサ皮下注140mgペン | 1キット | 24,302円 |
レパーサ皮下注420mgオートミニドーザー | 1キット | 47,188円 |
副作用と注意点
主な副作用
- 注射部位反応(痛み・赤みなど)
- 筋肉痛、関節痛
- 肝機能異常
- 糖尿病や血糖値の悪化
使用上の注意
- 適応の慎重な判断が必要
- 定期的な採血での効果確認が必須
- スタチンとの併用が前提(使えない場合は除く)
- 自己注射の指導・廃棄方法の確認が重要
当院ではオンライン診療で処方していません
以下の理由から、レパーサは当院のオンライン診療では原則処方していません:
理由
- 注射薬であり、自己管理が必要
- 高額で管理が複雑
- 定期的な採血によるモニタリングが必須
- 使用対象が限られる薬剤(特別な事情がある場合のみ)
ではどうする?
- スタチンで十分な効果が出ない、もしくは副作用で困っている場合
- LDLがなかなか下がらない場合
上記のような場合は、当院にご相談いただければ、必要に応じて専門医療機関をご紹介いたします。
まとめ
- レパーサ(エボロクマブ)はPCSK9阻害薬という新しい種類の注射薬で、LDLコレステロールを大きく下げる効果がある
- 通常のスタチンで効果が不十分な方や、スタチンが使えない方などが対象
- 高額かつ注射管理が必要であるため、オンライン診療での処方は適しません
- 当院では対面での相談・評価を重視し、必要に応じて専門機関へご紹介します
ご相談について
「通常の薬でLDLが下がりきらない」「副作用でスタチンを使えない」などのお悩みがある方は、まずは当院でご相談ください。専門的な治療が必要と判断した場合には、安心して受診いただける提携医療機関をご案内いたします。
参考文献
- レパーサ添付文書(2024年10月 改訂 第2版)
- KEGG データベース
- PMDA医薬品医療機器総合機構
よくある質問(Q&A)
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レパーサって、他のコレステロールの薬と比べて何がすごいの?
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レパーサ(エボロクマブ)は、従来の「飲み薬(スタチン系など)」とは異なり、注射によってLDLコレステロールを劇的に下げられる点が最大の強みです。
特に、スタチンでは効果が不十分だったり、副作用で使用できない方にとっては、心筋梗塞・脳卒中のリスクを下げる“最後の砦”のような存在です。さらに、以下のような点が他薬と異なるポイントです:
2週間に1回、または4週間に1回の皮下注でOK(飲み忘れの心配が少ない)
約60〜70%のLDL-C低下が期待できる(スタチンと比べても強力)
心筋梗塞や脳卒中の発症リスクをさらに減らすことが、国際試験でも確認されている
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レパーサっていつ発売された薬なの?
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レパーサは2016年に日本で発売された薬です。
PCSK9阻害薬としては、国内初の承認薬であり、アムジェン社が製造・販売しています。
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レパーサの費用は?…30日分でどれくらいかかるの?
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以下が薬価の目安です(2024年時点):
製剤 薬価(税抜) 自己負担額(3割負担時) レパーサ皮下注140mgペン(2回分/月) 24,302円 ×2 = 約48,604円 約14,580円/月 レパーサ皮下注420mg(1回分/月) 47,188円 約14,156円/月 ※自己負担額はあくまで目安であり、年齢・収入によって高額療養費制度なども適用されます。
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レパーサは妊娠中でも使っていいの?
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妊娠中は原則として使用を避けるべき薬です。
添付文書では「治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与」とされています。また、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)との併用は妊娠中には禁忌とされており、胎児への影響(奇形や発育不良など)が報告されています。
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子どもにレパーサは使えるの?
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使用できるのは特定の病態(家族性高コレステロール血症)で、かつ12歳以上の子どもに限られます。
通常の高コレステロール血症に対しては、小児への安全性・有効性は確立されていません。
