コレステロールを下げる薬「アトーゼット」ってどんな薬?効果・副作用・注意点まとめ
コレステロールを下げる薬
「アトーゼット」ってどんな薬?
効果・副作用・注意点まとめ

脂質異常症のお薬で『アト―ゼット(エゼチミブ・アトルバスタチン)』を飲んでいます。

2種類の作用を持つ薬を合わせた薬ですね。
薬が一つになるので、毎日の服薬の負担を減らすことができます。
アト―ゼットは当院でも処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
アトーゼットとは
アトーゼットは、小腸でのコレステロール吸収を抑えるエゼチミブと、肝臓でのコレステロール合成を抑えるアトルバスタチンを1錠にまとめた配合薬です。
高コレステロール血症や家族性高コレステロール血症(FH)の治療に使用されます。
想定される使用場面
- 食事・運動療法を行っても改善が乏しい場合
- スタチン単剤ではLDLコレステロールの目標値に届かない場合
※スタチン=HMG-CoA還元酵素阻害薬。アトルバスタチンはその一つです。
アトーゼットの特徴
✅ 1. 作用機序が異なる2成分を配合
- エゼチミブ
→ 小腸のコレステロール吸収を阻害(NPC1L1タンパク質をブロック) - アトルバスタチン
→ 肝臓でのコレステロール合成を抑制
→ 異なる作用で補い合い、より強力なLDL-C低下が期待できます。
✅ 2. 1日1回1錠の簡便な服薬
- 多剤併用に比べ、飲み忘れのリスクが減り、服薬アドヒアランスの向上が見込めます。
効能・効果
- 高コレステロール血症
- 家族性高コレステロール血症(FH)
▼ 使用上の注意点
- 第一選択薬ではありません
→ まずは生活習慣の改善やスタチン単剤での治療を優先します。 - ホモ接合体FHには補助的に使用
→ LDLアフェレーシス等の非薬物療法が難しい場合に考慮されます。
用法・用量
▼ 基本的な服用方法
製品名 | 含有量(エゼチミブ/アトルバスタチン) | 通常用法 |
---|---|---|
アトーゼットLD | 10mg / 10mg | 1日1回 食後に1錠服用 |
アトーゼットHD | 10mg / 20mg | 同上 |
▼ 適用の目安(原則)
- LD:
既にエゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mgを併用中、またはアトルバスタチン10mgで効果不十分な場合 - HD:
既にエゼチミブ10mg+アトルバスタチン20mgを併用中、またはHD未満で効果不十分な場合
使用できない方(禁忌)
以下の方には原則使用できません。
❌ 禁忌対象
- 成分に対する過敏症の既往がある
- 重篤な肝機能障害・肝疾患を有する
- 妊婦・授乳婦
- マヴィレット(グレカプレビル・ピブレンタスビル)服用中の方
飲み合わせに注意が必要な薬
アトーゼットの成分は他の薬と相互作用を起こしやすいため注意が必要です。
💊 特に注意すべき薬剤(併用注意・禁忌)
薬剤群 | 注意点 |
---|---|
フィブラート系薬剤(ベザフィブラートなど) | 横紋筋融解症リスク上昇 |
ニコチン酸製剤 | 同上 |
免疫抑制剤(シクロスポリンなど) | 血中濃度上昇、腎障害リスク |
一部抗真菌薬・抗菌薬 | アトルバスタチン血中濃度↑(CYP3A4阻害) |
グレープフルーツジュース | アトルバスタチン血中濃度↑ |
陰イオン交換樹脂(コレスチミドなど) | 吸収低下 → 服用間隔をあける必要あり |
現在服用している薬がある方は、医師または薬剤師に必ず申告してください。
副作用と発生頻度
◆ 臨床試験での副作用発現率
- 発現率:約1.5%(272例中4例)
- 主な副作用:
- 腹部膨満、便秘、胃炎
- ALT、ASTの上昇(肝機能検査値の異常)
◆ 重大な副作用(頻度不明)
種類 | 症状・内容 |
---|---|
横紋筋融解症・ミオパチー | 筋肉痛、脱力感、腎障害など |
劇症肝炎、肝機能障害 | 倦怠感、黄疸、嘔吐など |
皮膚症候群(TEN、SJSなど) | 発疹、水疱など |
過敏症 | アナフィラキシー、発疹など |
その他 | 高血糖、糖尿病、間質性肺炎、重症筋無力症など |
まとめ
アトーゼットは、エゼチミブとアトルバスタチンの2成分を配合し、LDLコレステロールをより効率的に下げたい患者さんに向けた治療薬です。
💡 アトーゼットのポイント
- 作用が異なる2成分で相乗的な効果
- 1日1回1錠で服薬しやすい
- ただし副作用や相互作用もあるため、医師の指示に従うことが重要
🚨 注意点
他の薬との相互作用に注意(必ず服用薬を伝える)でも、スタチンとの併用でも効果を発揮し、コレステロール管理の幅を広げてくれる存在です。
第一選択薬ではない
定期的な血液検査(特に肝機能・筋酵素)を忘れずに
参考情報・出典
- PMDA 添付文書(医薬品医療機器総合機構)
- KEGG DRUG: D10385(化合物・薬物の詳細)
- 日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン(最新版)
- 論文:
- "Efficacy of ezetimibe plus atorvastatin versus atorvastatin alone in Japanese patients with hypercholesterolemia: A randomized, double-blind trial"
よくある質問(Q&A)
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アトーゼットの発売年はいつ?
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アトーゼットは、2017年9月に日本で「高コレステロール血症」「家族性高コレステロール血症」の効能で承認されました。
その後、2021年10月に製造販売元がMSD株式会社からオルガノン株式会社へ移管されています。
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アトーゼットの薬価はいくら?自己負担額の目安も知りたい
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アトーゼットには、先発品と後発品(ジェネリック)の両方があります。2024年時点の薬価と、1日1錠×30日分を処方された場合の目安は以下の通りです。
製品名 薬価(1錠) 30日分の薬価 3割負担の目安 製造会社 アトーゼットLD(先発品) 66.2円 約1,986円 約600円前後 オルガノン アトーゼットHD(先発品) 64.9円 約1,947円 約590円前後 オルガノン エゼアトLD「JG」(ジェネリック) 57.8円 約1,734円 約520円前後 日本ジェネリック エゼアトHD「JG」(ジェネリック) 56.9円 約1,707円 約510円前後 日本ジェネリック ※上記は薬剤費のみ。実際には調剤料・薬剤管理料などが加算されます。
※「LD」はアトルバスタチン10mg配合、「HD」は20mg配合。
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妊娠中でもアトーゼットは使えるの?
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妊娠中は使用できません(禁忌)。
動物実験では胎児への発育抑制や骨格奇形が報告されており、スタチン系薬では人でも先天性異常の報告があります。
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小児には使用できますか?
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アトーゼットは小児に対する使用経験がなく、臨床試験も実施されていません。
そのため、原則として小児には使用されません。
