高血圧治療薬アジルサルタン(アジルバ)

高血圧治療薬
アジルサルタン(アジルバ)

血圧の薬で『アジルサルタン(アジルバ)』を飲んでいます。

2014年に発売され新しいARBの薬です。

今までのARBの中で最も降圧効果が高いのが特徴です。

顆粒タイプもあり、錠剤の内服が難しい患者さんにも適しています。

アジルバは当院でも処方可能です。

この記事では、公的な参考資料を基に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

アジルサルタン(アジルバ)とは

アジルサルタンは、武田薬品工業株式会社が創製した**アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)**の一種です。アンジオテンシンIIという血管を強く収縮させる物質が、血圧を上昇させる主な原因のひとつですが、アジルサルタンはその働きをブロックして血圧を下げます。国内では2012年1月に20mgと40mg製剤が承認され、その後、10mg製剤や小児適応(2歳以上)も追加承認されました。


アジルサルタン(アジルバ)の特徴

  1. 選択的な受容体阻害作用
    アジルサルタンはアンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体を選択的に阻害し、血管収縮作用を緩和します。
  2. 強力かつ持続的な降圧効果
    1日1回の服用でも24時間を通して血圧をコントロールし、日内変動(1日の血圧の上下)を是正する作用が期待できます。
  3. 成人だけでなく小児への適応
    日本国内では6歳以上、さらには2歳以上6歳未満に対しても用量追加承認が取得されており、小児の高血圧にも使用される場合があります。

効能・効果

アジルサルタン(アジルバ)は「高血圧症」の治療に用いられます。
高血圧症の患者さんにとって、血圧を適切に下げることは脳卒中や心臓病などの重大な合併症リスクを軽減するうえで非常に重要です。アジルサルタンは、過剰な血管収縮を抑え、末梢血管抵抗(血管の“詰まり”)を低下させることで血圧を下げる効果を発揮します。


用法・用量

以下は一般的な用法・用量の概要です。患者さんの年齢・症状や、併発している病気などによって調整されますので、必ず医師の指示に従ってください。

成人

  • 通常:1日1回、アジルサルタンとして20mgを経口投与
    (最大1日40mgまで増量可)

※ 腎機能障害や肝機能障害のある場合、または高齢者などでは低用量から開始するなど、さらに慎重に調整されることがあります。

小児

  • 6歳以上の小児:体重50kg未満では1日1回2.5mgから開始、50kg以上では5mgから開始し、最大投与量は20〜40mgを上限に増量する場合があります。
  • 2歳以上6歳未満の小児(10mg/20mg錠や顆粒1%製剤の場合)
    通常、体重1kgあたり0.1mg/kg(最大2.5mg)から開始し、必要に応じて最大0.8mg/kg(最大20mg)まで増量されることがあります。

小児用量は体重や年齢、症状によって細かく調整が必要となります。


使用できない方(禁忌)

アジルサルタンを使用できないケース(禁忌)は以下のとおりです。

  1. アジルサルタン成分に対して過敏症(アレルギー)の既往がある方
  2. 妊婦または妊娠している可能性のある女性
    • 妊娠中にARBなどのレニン-アンジオテンシン系阻害薬を使用すると、胎児・新生児への重篤な影響が報告されています。
  3. アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者さん
    • ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧がコントロールできない場合を除きます。

妊娠の可能性がある方、妊娠を望む方は必ず主治医に相談し、代替薬の検討など適切な対策が取られます。


併用に注意が必要な薬

以下の薬を服用している方は、アジルサルタンとの併用で副作用や降圧作用が強まる可能性があります。必ず医師・薬剤師に相談してください。

  1. カリウム保持性利尿剤(スピロノラクトンなど)・カリウム補給剤
    • 高カリウム血症を引き起こす可能性が高まります。
  2. 他の降圧薬(利尿降圧剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アリスキレンフマル酸塩など)
    • 血圧低下が過度になる、腎機能障害、電解質異常(とくにカリウム上昇)を起こすリスクがあります。
  3. リチウム製剤
    • リチウム中毒のリスクが高まる可能性があります。
  4. 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
    • 降圧効果の減弱、腎機能の悪化が報告されています。

上記以外にも、併用で注意が必要な薬は多数あります。自己判断で市販薬やサプリメントを含めて追加・中止せず、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。


副作用と発生頻度

重大な副作用

  • 血管浮腫(顔や口唇、舌、喉などの腫れ)
  • ショック・失神・意識消失
  • 急性腎障害
  • 高カリウム血症
  • 肝機能障害(ASTやALTなど肝酵素の上昇)
  • 横紋筋融解症(筋肉痛、脱力感、CK上昇などを伴う重篤な症状)

これらは頻度は高くありませんが、発症した場合には重症化することがあるため、頭痛や脱力感、むくみ、倦怠感など異常を感じた際には早めに受診しましょう。

その他の副作用例

  • めまい、ふらつき、頭痛
  • 血中カリウム・尿酸の上昇
  • 下痢
  • 肝機能値(ALT、AST)の上昇
  • 腎機能値(BUN、クレアチニン)の上昇
  • 咳嗽(せき)(頻度不明ながら報告あり)

副作用の多くは軽度ですが、体調に異変を感じたら服用を自己判断で中止せず、まずは処方医や薬剤師に相談してください。


まとめ

アジルサルタン(アジルバ)は、高血圧症の治療に広く使われるARBの一種で、1日1回の服用で持続的かつしっかりとした降圧効果が期待できます。小児を含む幅広い患者さんに使用されています。


参考情報・出典

  • PMDA 医薬品添付文書(アジルバ®)https://www.pmda.go.jp で「アジルサルタン」で検索
  • インタビューフォーム(武田薬品工業)
  • 高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会)2024年版

よくある質問(Q&A)

他のARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と比べて、アジルサルタンの強みは何ですか?

アジルサルタン(アジルバ®)は、同系統のARB(例:ロサルタン、カンデサルタン、テルミサルタンなど)と比べて、より強力で持続的な降圧効果が確認されています。
とくに、24時間持続する血圧コントロール能力や日内変動の是正効果に優れており、第III相試験ではカンデサルタンと比較して有意に大きな血圧低下を示しました(p<0.0001)

また、AT1受容体に対する結合力が強く、解離しにくい(ゆっくり外れる)特性も、安定した降圧効果につながっています。

アジルサルタン(アジルバ®)はいつ発売された薬ですか?

アジルサルタン(アジルバ®)は、2012年1月に日本で承認・発売されました(20mg・40mg錠)。
その後、10mg製剤は2014年3月、小児用の顆粒剤は2021年9月に承認されました。

アジルバの1か月あたり(30日分)の薬価と、実際の自己負担額の目安は?

薬価(2024年時点)は以下の通りです:

製剤名薬価(1錠)30日分(1日1錠)薬価合計自己負担3割の目安
アジルバ錠10mg55.1円1,653円約500円
アジルバ錠20mg83.3円2,499円約750円
アジルバ錠40mg123円3,690円約1,110円

※自己負担額は3割負担の場合の概算です。調剤料や処方箋料は含まれていません。

ジェネリック医薬品になると上記の値段よりも薬剤費は下がります

妊婦はアジルサルタンを服用できますか?

妊婦または妊娠の可能性がある方には、アジルサルタンは禁忌です。
妊娠中に服用した場合、胎児に以下のような重篤な影響が報告されています:

  • 羊水過少症
  • 胎児の腎不全や肺低形成
  • 四肢の拘縮や頭蓋・顔面の奇形
  • 死産や新生児の死亡など

妊娠が判明したら、ただちに服用を中止し、医師に相談してください。

アジルサルタンは小児でも使えますか?どんな注意点がありますか?

はい、アジルサルタンは2歳以上の小児にも使用可能です。
ただし、年齢や体重に応じて細かく用量を調整する必要があります。

  • 2歳以上6歳未満:体重1kgあたり0.1mg/kgから開始(最大20mgまで)
  • 6歳以上:体重50kg未満は2.5mg、50kg以上は5mgから開始

注意点:

  • 腎機能やカリウム値のモニタリングが必須です
  • 腎機能障害を合併する小児では副作用のリスクが上がります
  • 2歳未満の安全性は確立されていません

小児用には顆粒剤(アジルバ顆粒1%)もあります。