高血圧治療薬テルミサルタン(ミカルディス)

高血圧治療薬
テルミサルタン(ミカルディス)

血圧の薬で『テルミサルタン(ミカルディス)』を飲んでいます。

高血圧のARBの中でも肝臓で薬が代謝(分解)されるので、

腎臓の悪い方でも使いやすいのが特徴です。

ミカルディスは当院でも処方可能です。

この記事では、公的な参考資料を基に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

テルミサルタン(ミカルディス)とは

テルミサルタン(商品名:ミカルディス)は、高血圧症の治療に用いられる「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」という種類の薬です。
アンジオテンシンIIという体内の血圧上昇物質が働く受容体(AT1受容体)をブロックすることで、血管を拡げ、血圧を下げる効果を発揮します。


テルミサルタン(ミカルディス)の特徴

  1. 24時間持続する降圧効果
    一回の服用で1日(24時間)にわたって血圧をコントロールします。特に、早朝の急な血圧上昇を抑えるのに役立ちます。
  2. 血中半減期が比較的長い
    血中半減期(薬の効果が半分になるまでの時間)は20~24時間と長めです。そのため、1日1回の服用で持続的な降圧効果が期待できます。
  3. 胆汁排泄型でCYP代謝の影響を受けにくい
    テルミサルタンは主に胆汁から排泄され、肝臓の主な代謝酵素であるCYP(シトクロムP450)の影響をほとんど受けません。他のお薬との相互作用が比較的少ないとされています。

効能・効果

  • 高血圧症
    血圧を下げることで、脳卒中や心臓病などの合併症を予防することを目的に処方されます。

用法・用量

  • 通常:テルミサルタンとして1日1回40mgを経口投与
  • 開始量の目安:20mgから始めることもあります
  • 最大投与量:1日80mgまで
  • 肝機能障害のある方:1日40mgを上限に調整

服用するタイミングは医師の指示によりますが、食後に飲むと空腹時に比べて血中濃度が下がりやすい傾向があります。同じタイミング(食後・食間など)で毎日継続して服用するようにしてください。


使用できない方(禁忌)

次の方はテルミサルタン(ミカルディス)を使用できません。

  1. 成分に対して過敏症(アレルギー)の既往歴がある方
  2. 妊婦または妊娠している可能性のある女性
    • 妊娠中期~後期に使用すると、胎児の腎障害や低血圧などの重大な影響が報告されています。
  3. 胆汁の分泌が極めて悪い方、重篤な肝障害のある方
    • 本剤は胆汁排泄型であるため、肝臓や胆汁の状態が重度に悪い場合は使えません。
  4. アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者さん(一部例外を除く)
    • 組み合わせにより、腎機能障害や高カリウム血症などのリスクが増加すると報告されています。

併用に注意が必要な薬

以下のお薬を使用中、または使用予定の場合は、必ず医師・薬剤師に伝えてください。

  1. ジゴキシン(強心薬)
    • 血中濃度が上昇し、不整脈などのリスクが高まる可能性があります。
  2. カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレンなど)、カリウム製剤
    • 高カリウム血症(血中のカリウムが多くなる状態)を起こしやすくなります。
  3. リチウム製剤(炭酸リチウム)
    • 併用によりリチウム中毒が起こる可能性があります。
  4. 他の降圧薬や利尿薬(フロセミドなど)
    • 急激な血圧低下に注意が必要です。医師の指示に従い、ゆっくり増量します。
  5. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
    • 腎機能が低下したり、降圧効果が弱まったりすることがあります。
  6. アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
    • 腎機能障害や高カリウム血症が起こるリスクが高まります。
  7. アリスキレンフマル酸塩
    • 腎機能障害、高カリウム血症、低血圧のリスクが上がるため、特に腎機能が低下している方は注意が必要です。

副作用と発生頻度

重大な副作用(頻度はいずれも低いが要注意)

  1. 血管浮腫(顔や舌・のどの腫れ)
    呼吸が苦しくなるほど重症化することがあります。
  2. 高カリウム血症
    むくみや筋力低下、重症の場合は不整脈につながることもあります。
  3. 腎機能障害
    急性腎障害として急に腎機能が悪化するケースがあります。
  4. ショック、失神、意識消失
    血圧が下がりすぎると、めまいや失神を起こすことがあります。
  5. 肝機能障害、黄疸
    倦怠感や黄疸などが見られた場合は、医療機関へ相談が必要です。
  6. 低血糖
    とくに糖尿病治療中の方で、脱力感や冷汗、意識障害などの症状に注意が必要です。
  7. アナフィラキシー(重度のアレルギー反応)
    全身の発疹や呼吸困難、血圧低下などを伴うことがあります。
  8. 間質性肺炎
    発熱や呼吸困難、咳が続く場合には、投薬の中止と早急な対応が必要です。
  9. 横紋筋融解症
    筋肉痛、脱力感とともに尿が茶褐色になるなどの症状がある場合は要注意です。

その他の副作用(主なもの)

  • めまい、ふらつき、頭痛、ほてり、動悸、下痢、腹痛 など
  • 血清クレアチニンや血清カリウム値の上昇
  • 皮膚のかゆみ、発疹

副作用が疑われる症状が出たときは、ただちに処方医または薬剤師に相談してください。


まとめ

テルミサルタン(ミカルディス)は、1日1回の服用で24時間血圧をコントロールできるARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)です。主に胆汁から排泄され、他の薬との相互作用が比較的少ないとされています。逆に腎臓の悪い方でも使いやすいお薬です。高血圧症を長期的に管理していくうえで、多くの方に使用されているお薬です。


参考情報・出典

  • 医薬品添付文書(ミカルディス錠)
  • 医薬品インタビューフォーム(日本ベーリンガーインゲルハイム社)
  • PMDA医薬品医療機器総合機構のWebサイト
  • 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2024」
  • KEGG DRUG(https://www.genome.jp/kegg/drug/D00627)

よくある質問(Q&A)

テルミサルタン(ミカルディス)の発売年は?

テルミサルタンは、日本では2002年10月にカプセル剤として初めて承認・発売されました。
その後、服薬のしやすさを考慮して、2004年に20mg錠・40mg錠、2010年には80mg錠が承認されています。

テルミサルタン(ミカルディス)の1か月(30日分)の薬価と自己負担額の目安は?

2023年5月時点の薬価をもとに、30日分の費用(1日1回服用の場合)を以下にまとめます。

規格薬価(1錠あたり)30日分薬価自己負担額(3割負担)
20mg25.3円759円約230円
40mg38.2円1,146円約344円
80mg55.2円1,656円約497円

※自己負担額はおおよその目安で、調剤料や処方料は含まれていません。

妊婦はテルミサルタン(ミカルディス)を使用できますか?

妊婦または妊娠の可能性がある女性には使用できません(禁忌)
妊娠中に使用すると、胎児に腎機能障害、頭蓋の形成異常、羊水過少、死亡など重大な影響を与えるリスクがあります。特に妊娠中期以降での使用は極めて危険です。

投与中に妊娠が判明した場合は、すぐに中止し、医師へ相談してください。

小児はテルミサルタン(ミカルディス)を使えますか?

小児に対する使用は推奨されていません
国内での小児を対象とした臨床試験は実施されておらず、安全性や有効性が確認されていないため、原則として小児には使われません。