高血圧治療薬イルベサルタン(アバプロ)
高血圧治療薬
イルベサルタン(アバプロ)

血圧の薬で『イルベサルタン(アバプロ)』を飲んでいます。

高血圧の薬ですが、米国では糖尿病性腎症にも適応があるのが特徴です。
アバプロは当院でも処方可能です。
この記事では、公的な参考資料を基に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
イルベサルタン(アバプロ)とは
イルベサルタン(商品名:アバプロ)は、フランスのSANOFI社が開発した「アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)」と呼ばれる高血圧治療薬です。アンジオテンシンII(AII)という血圧を上げるホルモンが、その作用を発揮する受容体(AT1受容体)に結合するのを防ぐことで、血管を拡げて血圧を下げます。
イルベサルタン(アバプロ)の特徴
- 24時間にわたる安定した降圧効果
臨床試験において、携帯型自動血圧計(ABPM)で測定すると24時間しっかり血圧をコントロールできることが確認されています。血中半減期が10.1~15.2時間と長く、1日1回の服用で持続的な効果を得られるのが特徴です。 - 幅広い高血圧症での効果
軽症から重症の高血圧症まで、有効性が確認されています。また、海外では2型糖尿病を合併する高血圧患者さんの腎障害(糖尿病性腎症)に対する適応も承認されています(※日本での正式適応は「高血圧症」のみです)。 - 相対的に副作用が少ない
同じ“レニン・アンジオテンシン系”を抑えるACE阻害薬と比較すると、空咳などの副作用が少ないことがARB共通のメリットです。ただし、重大な副作用がゼロというわけではありませんので、注意は必要です。
効能・効果
- 高血圧症
日本で承認されている主な効能・効果は高血圧症の治療です。血圧を適正にコントロールすることで、脳卒中や心不全、腎不全などの合併症を予防することを目指します。
※海外では、2型糖尿病を合併する高血圧患者さんにおける糖尿病性腎症の進展抑制目的でも使われています。
用法・用量
- 通常用量
1日1回、イルベサルタンとして50~100mgを経口投与します。医師の判断で最大200mgまで増量することがあります。 - 服用タイミング
食事の影響はほとんど受けないとされています。食前・食後を問わず、医師の指示通りに1日1回服用してください。
服用開始時や増量時には、めまい・立ちくらみなどに注意しながら医師の指示を守りましょう。
使用できない方(禁忌)
次の患者さんにはイルベサルタン(アバプロ)を使用できません。
- 本剤の成分に対して過敏症(アレルギー)の既往歴がある方
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性
- 妊娠中期以降に服用すると、胎児に重大な影響が出るリスクが高まります。
- 妊娠が判明したら直ちに医師に相談し、服用を中止してください。
- アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)を投与中の糖尿病患者さん(ただし、他の降圧治療を行っても血圧コントロールが非常に難しい場合を除く)
併用に注意が必要な薬
イルベサルタン(アバプロ)と併用する際に注意が必要な代表的な薬剤は以下のとおりです。
- カリウム保持性利尿薬、カリウム補給剤
- カリウム値が上昇し、高カリウム血症を引き起こすおそれがあります。
- 利尿降圧薬(フロセミド、トリクロルメチアジドなど)
- 血圧が急激に下がる可能性があります。低用量から慎重に開始することが推奨されます。
- ACE阻害薬(エナラプリル、イミダプリルなど)
- レニン−アンジオテンシン系が過剰に抑制され、腎機能障害や高カリウム血症を起こすリスクがあります。
- NSAIDs(ロキソプロフェン、インドメタシンなど)
- イルベサルタンの降圧効果が弱まる可能性があり、腎機能低下のある方では腎機能がさらに悪化するリスクもあります。
- リチウム製剤(炭酸リチウムなど)
- リチウム濃度が上昇し、中毒症状(振戦、腎機能障害など)が発現するおそれがあります。
特に、他の降圧薬と一緒に服用している方や腎機能障害がある方は、主治医とよく相談しながら服用してください。
副作用と発生頻度
重大な副作用
- 血管浮腫(顔・口唇・舌の腫れなど)
- 高カリウム血症(倦怠感、しびれ、筋力低下など)
- ショック、失神、意識消失
- 腎不全
- 肝機能障害、黄疸
- 低血糖
- 横紋筋融解症(筋肉痛、脱力感、尿の色変化など)
これらは頻度は多くありませんが、症状が疑われる場合にはただちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
その他の副作用
- めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 頭痛、眠気、しびれ感
- 悪心、嘔吐、胃の不快感
- 発疹、かゆみ
- 検査値の変化(BUN、クレアチニン、肝機能値の上昇など)
国内の製造販売後臨床試験(1年間投与、166例対象)では、約10.8%に何らかの副作用が認められたとの報告があります。大半は軽度とされますが、服用中に気になる症状があれば、早めにご相談ください。
まとめ
イルベサルタン(アバプロ)は、高血圧症の治療薬として、1日1回の服用で安定した降圧効果を得られる長時間作用型ARBです。軽症から重症まで幅広い高血圧症に適応があり、副作用は比較的少ないとされています。糖尿病性腎症を併発している方に適する薬です。
参考情報・出典
アバプロ添付文書(2025年2月改訂 第5版)
医薬品インタビューフォーム(住友ファーマ株式会社)
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2024」
医薬品医療機器総合機構(PMDA)ウェブサイト
PubMed掲載の臨床試験報告(Irbesartan and diabetic nephropathy など)
よくある質問(Q&A)の情報は2025年3月時点のものです。最新の情報は必ず医療機関または公式情報を確認してください。)
よくある質問(Q&A)
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アバプロ(イルベサルタン)の発売年はいつですか?
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イルベサルタン(アバプロ)は、海外では1997年8月に承認され、日本国内では2008年4月に高血圧症の適応で承認・発売されました。
さらに、服薬しやすくするための200mg錠が2013年3月に追加承認されています。
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アバプロを30日間処方された場合の薬価と自己負担額の目安はいくらですか?
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2025年時点の薬価(1錠あたり)と、1日1回服用・30日分の計算は以下の通りです。
用量 薬価(1錠) 30日分薬価合計 自己負担額(3割負担) 50mg 25.4円 762円 約230円 100mg 47.9円 1,437円 約430円 200mg 69.8円 2,094円 約630円 ※ 実際の調剤料・管理料などを含めると、自己負担額はもう少し
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妊娠中にイルベサルタン(アバプロ)は使えますか?
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妊婦さん、または妊娠の可能性がある女性には使用できません(禁忌)。
とくに妊娠中期以降に使用した場合、胎児の腎機能障害、羊水過少、奇形、死亡などの重大なリスクがあります。
服用中に妊娠が判明した場合はただちに服用を中止し、医師に相談してください。
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イルベサルタン(アバプロ)は小児にも使用できますか?
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日本国内では、小児への使用に関する安全性と有効性は確立されていません。
そのため、小児には原則として使用されない薬です。
