高血圧治療薬『ロサルタン(ニューロタン®)』

血圧の薬でロサルタン(ニューロタン®)を飲んでいます。

世界初のARB治療薬ですね。過去からの使用実績が多く安心のお薬です。
ロサルタンは当院でも処方可能です。
この記事では、公的な参考資料を基にくすりの特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
ロサルタン(ニューロタン®)とは?
ロサルタン(英名:Losartan)は、**アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)**と呼ばれる高血圧治療薬の一つです。世界で初めてARBとして承認された薬であり、日本では「ニューロタン®」(MSD社)として発売されています。高血圧の治療においては長年の使用実績があり、心血管イベントのリスク低減にも寄与するとされています。
1. ロサルタン(ニューロタン®)の特徴
- 血圧を下げるメカニズム(作用機序)
アンジオテンシンIIという強力な血管収縮物質の受容体を阻害することで、血管を広げ血圧を下げます。 - 多様なエビデンス
ロサルタンはARBのなかでも比較的早期に開発され、多くの臨床試験データが蓄積されています。特に糖尿病性腎症や心血管疾患のリスク低減に関するエビデンスが報告されています。
2. 適応となる主な疾患
- 高血圧
ロサルタンは主に本態性高血圧(原因が特定できないタイプの高血圧)を対象とします。 - 腎障害を伴う2型糖尿病
特にアルブミン尿(タンパク尿)が見られる場合、ロサルタンによる腎保護効果が期待されます。
※適応は製品ごとに多少異なる場合があります。詳しくは添付文書や医療機関の指示に従ってください。
3. 用法・用量
高血圧に対する用法・用量(成人の場合)
- 通常:1日1回50mg を経口投与します。
- 症状や年齢、腎機能などに応じて、25mgに減量する場合や100mgまで増量する場合があります。
腎障害を伴う2型糖尿病(高血圧合併)の場合
- 通常:1日1回50mg
- 腎機能状態や血圧コントロールの程度によっては100㎎までの増量が検討されます。
※用法・用量は個々の患者さんの状態によって医師が判断します。必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。くれぐれも自己判断で変更しないようにしましょう。
4. 効果・期待されるメリット
- 血圧管理の改善
血圧が安定することで、脳卒中や心不全、心筋梗塞などのリスク低減が期待できます。 - 腎機能保護
糖尿病性腎症の進行を抑制する効果が報告されており、アルブミン尿を減らす作用が見込めます。 - 服用しやすい(副作用が比較的少ない)
ARBは、ACE阻害薬でしばしばみられる空咳の副作用が少ない点が大きな利点です。
5. 副作用について
主な副作用と発生頻度
- めまい・立ちくらみ(0.1~5%程度)
血圧低下に伴い、ふらつきや立ちくらみが起こることがあります。 - 高カリウム血症(頻度不明)
腎機能に影響がある方などは、カリウム値の上昇に注意が必要です。 - 腎機能障害の増悪
既に腎機能が低下している方は慎重に使用されますが、まれに腎機能が悪化するケースがあります。 - 発疹・かゆみなどの過敏症状
重篤なアレルギー反応はまれですが、皮膚症状が出る場合があります。
注意点
- 副作用の頻度は患者さんの状態や併用薬などによって異なります。定期的に血液検査(腎機能・電解質など)を行いながら、安全に使用することが大切です。
- 服用中に異変を感じた場合は自己判断で中止せず、まずは医師または薬剤師に相談してください。
6. ロサルタン(ニューロタン®)の強み
- 強み
- ARBとしての実績が最も長いことから、臨床試験や症例データが豊富。
- 糖尿病性腎症や心血管リスク低減に関するエビデンスが積み重なっており、適応症例が幅広い。
7. まとめ
ロサルタン(ニューロタン®)は、高血圧治療薬のなかでも長い使用実績を持つARBであり、エビデンスの豊富さや副作用の少なさがメリットです。特に糖尿病性腎症を有する患者さんや心血管リスクの高い患者さんに対しては、腎保護や心血管イベントのリスク低減という点で重要な選択肢となり得ます。ただし、降圧効果の現れ方や副作用のリスクは個人差があるため、定期的な検査や医師による診察が欠かせません。自己判断での増減量や中止は避け、疑問点や不安があれば必ず医療機関へ相談しましょう。
参考情報
- ニューロタン®添付文書(MSD株式会社)
- ニューロタン®インタビューフォーム(IF)
- PMDA(医薬品医療機器総合機構):https://www.pmda.go.jp/
- 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン
- Brenner BM, et al. "Effects of losartan on renal and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and nephropathy." N Engl J Med. 2001; 345: 861-869.
- 製薬メーカー公式情報(MSD株式会社ウェブサイト)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診療上のアドバイスではありません。実際の治療にあたっては、必ず主治医や薬剤師と相談してください。
よくある質問(Q&A)
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ニューロタン®を1か月(30日)処方された場合の薬価と実際の自己負担額は?
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2024年時点の薬価(1錠あたり)は以下の通りです:
規格 薬価(1錠) 30日分(薬価合計) 自己負担額(3割負担の場合) 25mg 26.9円 807円 約240円 50mg 48.4円 1,452円 約440円 100mg 77.2円 2,316円 約700円 ※自己負担額は薬価のみをもとにした目安です。実際の支払い額には調剤料や薬剤服用歴管理指導料などが加算されます。
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ロサルタンとの飲み合わせに注意すべき薬はありますか?
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はい、以下の薬剤とは併用禁忌または注意が必要です。
■ 併用禁忌(絶対に併用してはいけない)
- アリスキレン(商品名:ラジレス®)(※糖尿病の方):重度の高カリウム血症や腎機能障害のリスクが高まるため
■ 併用注意
- カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレンなど)
→ 高カリウム血症のリスク - NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬:ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)
→ 腎機能障害や降圧作用の減弱 - リチウム製剤
→ 血中リチウム濃度上昇による中毒リスク
必ず、他の薬との併用前には医師・薬剤師に相談してください。
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一度薬を飲み忘れたら、どうしたらいいですか?
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気づいた時点ですぐに1回分を服用して構いません。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分をスキップし、2回分をまとめて飲むのは絶対に避けてください。
飲み忘れが続くようであれば、服用時間を見直したり、ピルケースやスマホアプリを活用して対策しましょう。
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小児には使えますか?注意点はありますか?
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日本国内では、ロサルタンの小児への使用は慎重に判断されます。
添付文書上、**小児への有効性および安全性は確立していません(使用経験が少ない)**と記載されています。一部の国やガイドラインでは小児高血圧に対してロサルタンを使用するケースもありますが、日本では基本的に成人向けに使われる薬です。
小児に対しては、使用可否を専門医が個別に判断する必要があります。
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妊娠中でもロサルタンは使えますか?
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いいえ、使用できません。
ロサルタンを含むARB系薬剤は、妊娠中(特に妊娠中期以降)に服用すると胎児に重篤な影響を与える可能性があるため、妊娠が判明した時点で中止し、代替薬に切り替える必要があります。胎児への影響としては、腎機能障害、羊水過少、頭蓋骨低形成、新生児死亡などが報告されています。
妊娠を希望する方、または妊娠の可能性がある方は、あらかじめ医師に相談してください。
