高血圧治療薬「シルニジピン(アテレック)」

血圧の薬でシルニジピン(アテレック)を飲んでいます。

アムロジピンなどが効かないときに処方される薬ですね。

シルニジピンは当院でも処方可能です。

この記事では、公的な参考資料を基にくすりの特徴をわかりやすくお伝えします。

シルニジピンとは

シルニジピンは、高血圧(血圧が高い状態)の治療に使われるカルシウム拮抗薬(*1)という薬の一種です。同じカルシウム拮抗薬の仲間にはアムロジピンやニフェジピンなどがありますが、シルニジピンはL型だけでなくN型のカルシウムチャネルも遮断する特徴があります。

どうやって血圧を下げるの?

  • 血管を広げる作用
    シルニジピンが血管平滑筋のカルシウムチャネルをブロックすることで、血管がゆるみ、血圧が下がります。
  • 交感神経の働きを抑える作用(N型チャネル遮断)
    シルニジピンは血管を広げるだけでなく、交感神経から放出される神経伝達物質にも影響を及ぼしやすく、結果的に血圧の上昇を抑えやすいと考えられています。

用法・用量

通常、成人に対しては1日1回、5~10mgから開始されることが多いです。症状や血圧の状態によっては、医師の判断で1日20mgまで増量される場合もあります。ただし、

  • 年齢(高齢者など)
  • 他の疾患の有無(腎機能障害など)
  • 併用している薬の種類
    によって適切な量が変わることがあります。必ず主治医の指示に従って服用するようにしてください。

主な副作用とその頻度

シルニジピンを含むカルシウム拮抗薬では、以下のような副作用が報告されています。頻度はおおむね1~5%程度とされていますが、個人差や服用量、観察期間によって異なります。

  1. ほてり(顔面紅潮)・のぼせ
    血管が拡張することで起こりやすくなります。
  2. 頭痛・めまい
    血管が急に広がるため、一時的に脳への血流バランスが変化して起こることがあります。
  3. 動悸(心悸亢進)
    血圧が下がる過程で、反射的に心拍数が上がりやすくなる場合があります。
  4. 足のむくみ(浮腫)
    血管拡張により、特に足首まわりなどにむくみが出やすいことがあります。

まれですが、肝機能障害や重篤なアレルギー反応(発疹、かゆみなど)が報告される場合もあります。体調に異変を感じたら、自己判断で中止せず、まずは処方医や薬剤師に相談してください。


シルニジピンのメリット・他薬との違い

他のカルシウム拮抗薬との違い

  • N型チャネルブロックによる交感神経抑制効果
    アムロジピンなどの多くのカルシウム拮抗薬は主にL型を遮断しますが、シルニジピンはN型も遮断しやすいとされています。これにより、交感神経による血圧上昇の反応をある程度抑えられる可能性があります。
  • むくみ(浮腫)の出方が比較的少ないという報告も
    個人差は大きいものの、シルニジピンの方が足のむくみが生じにくいと感じる患者さんもいるようです。ただし必ずしもすべての方に当てはまるわけではありません。

腎臓への配慮

高血圧の方には、糖尿病や慢性腎臓病などを合併しているケースも多くあります。シルニジピンは腎臓の糸球体の輸出細動脈(efferent arteriole)を拡張しやすいという報告もあり、たんぱく尿の軽減に寄与する可能性が指摘されています。腎機能の状態に合わせた薬の選択肢として、担当医が考慮することがあります。


注意点

  1. 急な中止はしない
    高血圧治療薬全般にいえることですが、急に服用をやめると血圧が急上昇し、場合によっては心臓や脳に負担がかかるおそれがあります。必ず医師の指示に従ってください。
  2. 食生活・生活習慣の改善との併用が大切
    血圧を下げるには、減塩や適度な運動、体重管理、禁煙など、生活習慣の見直しも重要です。薬だけに頼らず、主治医や管理栄養士と相談しながら改善を目指しましょう。
  3. 他の薬との飲み合わせ
    β遮断薬や利尿薬、ARB・ACE阻害薬など、併用で相乗効果が出る場合もありますが、飲み合わせによっては低血圧が進みすぎるなどのリスクもあります。自己判断で市販薬を使うときも、薬剤師に相談することが望ましいです。

よくある質問(Q&A)


シルニジピンってどんな薬?どんな人に使われるの?

シルニジピンは「カルシウム拮抗薬」という種類の高血圧治療薬です。血管を広げて血圧を下げる作用があり、特に「顔のほてりが出やすい」「むくみやすい」といった副作用を気にする人に処方されることが多いです。交感神経の働きも抑える作用があるため、ストレスなどで血圧が上がりやすいタイプの方にも適しているとされます。

シルニジピンの先発薬はいつ発売されたの?

シルニジピンの先発品「アテレック錠」は1995年に発売されました(日本国内)。現在は複数の後発品(ジェネリック医薬品)も登場しており、薬価の安い選択肢も利用可能です。

シルニジピンの薬価は?30日分処方されたらいくらくらいかかる?

※以下は2※以下は2025年3月時点の薬価をもとにした参考情報です(ジェネリックを含む)

薬剤名錠剤(1日1回1錠)薬価(1錠あたり)30日分の薬価自己負担(3割)目安
シルニジピン錠5mg(ジェネリック)約10.1円約303円約91円
アテレック錠5mg(先発品)約16.2円約486円約146円

※薬局にて、処方料・調剤料などが別途かかります。

まとめ

シルニジピンは高血圧の治療において、血圧を下げるだけでなく交感神経を抑制しやすいという特徴から、むくみや心拍数の上昇などの副作用が他の薬より少ない可能性が示唆されています。ただし、個人差や併用薬との関係もあり、必ずしもすべての患者さんに当てはまるとは限りません。用法用量、副作用のチェックなどは主治医や薬剤師とよく相談し、定期的に検査や受診をしながら治療を継続していくことが大切です。

ご自身の血圧値や生活習慣、他の持病などに合わせた最適な治療法を一緒に考えていきましょう。ご不安な点があれば、遠慮なく医師や医療スタッフにご相談ください。

(本記事は、医療機関を受診される方向けの一般的な情報提供を目的としています。実際の治療方針や診断は、担当医の判断を優先してください。)やPMDA(医薬品医療機器総合機構)の報告書・製薬メーカーの公式情報に掲載されています。気になる方はそちらも参考にしてください。

参考情報

  • PMDA(医薬品医療機器総合機構)
  • 日本高血圧学会
    • 高血圧治療ガイドライン
  • 製薬メーカーの公式情報
    • シルニジピンの製造販売元が提供する添付文書・情報資材
  • 関連論文
    • J Hypertens. 2003; 21(11): 2201-2208.
    • Am J Hypertens. 2001; 14(9): 831-837.

(上記は一例です。学会発表や最新の論文なども適宜ご参照ください。)